2010-01-01から1年間の記事一覧

殺人の狂気に、二郎はおどる

武田泰淳の短編小説、「審判」の一部分を紹介する。主要登場人物「二郎」は、日中戦争時に兵士として中国に従軍した。その際、とある農村で老夫婦がうずくまっているのを見つける。二郎は、非戦闘員の彼らに銃口を向ける。「もとの私でなくなってみること、…

日本の統治構造 官僚内閣制から議院内閣制へ

おすすめ! 日本の統治構造 官僚内閣制から議院内閣制へ 飯尾潤 2007 中央公論新社 内容、カヴァー折口より 独特の官僚内閣制のもと、政治家が大胆な指導力を発揮できず、大統領制の導入さえ主張されてきた戦後日本政治。しかし一九九〇年代以降の一連の改革…

マスコミは、もはや政治を語れない 徹底検証:「民主党政権」で勃興する「ネット論断」

おすすめ! マスコミは、もはや政治を語れない 徹底検証:「民主党政権」で勃興する「ネット論断」 佐々木俊尚 2010 講談社 内容(「BOOK」データベースより) 総選挙分析、八ッ場ダム、記者クラブ開放、亀井徳政令、そして小沢一郎の政治資金問題―。新政権…

ボクの立ち位置

望ましい社会システムについて人と議論したり、人の主張に感じる違和感を分析したりしていると、だんだん自分の立ち位置がみえてくる。 自分の価値観が明らかになる。 2010年、12月現在、ボクはどんな価値観をもっているのか? それを少し整理してみよう、と…

ヒトの変異 人体の遺伝的多様性について

ヒトの変異 人体の遺伝的多様性について アルマン・マリー ルロワ (著) 上野 直人 (監修) 築地 誠子 (翻訳) 2006 みすず書房 内容、裏表紙より その昔、重い奇形をもつ人々は「怪物」とみなされた。いま、奇形は遺伝子の働きを知るうえで、貴重な手がかりと…

本能はどこまで本能か ヒトと動物の行動の起源

おすすめ! 本能はどこまで本能か ヒトと動物の行動の起源 マーク・S・ブランバーグ著 塩原通緒 原著2005 早川書房 内容、出版社ウェブサイトより 遺伝子か、環境か。神経学者が解き明かす行動と認識の起源 母鳥の後に一列にならんで池に向かうカモのヒナ。…

幽州台に登る歌(陳子昂)

幽州台に登る歌 陳子昂 前に古人を見ず 後ろに来者を見ず 天地の悠悠たるを念い 独り愴然として涕下る これは孤独をうたった詩だ。 人が人として生きる上で対面せざるを得ない絶対的な孤独と、その悲しみをうたった詩だ。 この詩のすばらしい点は、空間的な…

老子の思想と、人間臭い彼の嘆きについて

衆人は熙熙(きき)として、大牢(たいろう)を享(う)くるが如く、春の台(うてな)に登るが如し。我れ独り泊としてそれ未だ兆(きざ)さず、嬰児(えいじ)の未だわらわざるが如し。るいるいとして帰する所無きがごとし。衆人は皆余り有るに、我れ独り遣…

平沢ワード

平沢スキーなら、師匠の書く詩に圧倒され、茫然自失したことがあるだろう。 その詩の特徴に、言葉のつながりによる官能的な連想とともに、一つ一つの単語のイメージの豊かさがある。 その単語をまとめた人が2ちゃんねるにいた。 先達の仕事に感謝するととも…

人は心にあるものしか見えない

人は心にあるものしか見えない。 私たちは、自分の心のうちに存在するものだけを見て、そして世界を歩いていくのだ。

一つのメルヘン(中原中也)

一つのメルヘン 中原中也 秋の夜は、はるかの彼方(かなた)に、 小石ばかりの、河原があつて、 それに陽は、さらさらと さらさらと射してゐるのでありました。 陽といつても、まるで硅石(けいせき)か何かのやうで、 非常な個体の粉末のやうで、 さればこ…

新郎(太宰治)

新郎 太宰治 一日一日を、たっぷりと生きて行くより他は無い。 明日のことを思い煩うな。 明日は明日みずから思い煩わん。 きょう一日を、よろこび、努め、人には優しくして暮したい。 青空もこのごろは、ばかに綺麗だ。 舟を浮べたいくらい綺麗だ。 山茶花…

白頭を悲しむ翁に代わる(劉季夷)

白頭を悲しむ翁に代わる 劉季夷 今年(こんねん)花落ちて顔色改まり 明年花開いてまた誰かある 巳(すで)に見る松柏くだけて薪となるを 更(さら)に聞く桑田変じて海となるを 古人また洛城の東に無し 今人還(かえ)って対す落花の風 年年歳歳花あい似た…

黒い風琴(萩原朔太郎)

黒い風琴 萩原朔太郎 おるがんをお弾きなさい 女のひとよ あなたは黒い着物をきて おるがんの前に坐りなさい あなたの指はおるがんを這ふのです かるく やさしく しめやかに 雪のふつてゐる音のやうに おるがんをお弾きなさい 女のひとよ。 だれがそこで唱つ…

銀の滴(しずく)降る降るまわりに(知里幸恵)

梟の神の自ら歌った謡 「銀の滴(しずく)降る降るまわりに」 「銀の滴(しずく)降る降るまわりに、金の滴降る降るまわりに。」という歌を私は歌いながら 流に沿って下り、人間の村の上を通りながら下を眺めると 昔の貧乏人が今お金持になっていて、昔のお…

一粒の麦、もし地に落ちて死なずば、ただ一つにてあらん。死なば多くの実を結ぶべし。

一粒の麦、もし地に落ちて死なずば、ただ一つにてあらん。 死なば多くの実を結ぶべし。 『ヨハネによる福音書』(九十年代? 諸説有り)、第十二章 最近、友人(男)の母が亡くなりました。その訃報を聞き、私は強いショックを受ました。それからしばらくし…

さんたんたる鮟鱇(村野四郎)

さんたんたる鮟鱇 村野四郎 顎を むざんに引っかけられ 逆さに吊りさげられた うすい膜の中の くったりした死 これは いかなるもののなれの果だ 見なれない手が寄ってきて 切りさいなみ 削りとり だんだん稀薄になっていく この実在 しまいには うすい膜まで…

春と修羅・序(宮沢賢治)

春と修羅・序 宮沢賢治 わたくしという現象は 仮定された有機交流電灯の ひとつの青い照明です (あらゆる透明な幽霊の複合体) 風景やみんなといっしょに せわしくせわしく明滅しながら いかにもたしかにともりつづける 因果交流電灯の ひとつの青い照明で…

人間一般を知ることは、一人の人間を知るよりもたやすい

人間一般を知ることは、一人の人間を知るよりもたやすい ラ・ロシュフコー箴言集第六版(1693) 二宮フサ、1989訳出 岩波書店 この言葉は「ラ・ロシュフコー箴言集」におさめられている。 箴言とはいわゆる格言のこと。ラ・ロシュフコーはフランスの…

原爆小景、コレガ人間ナノデス(原民喜)

原爆小景 原民喜 コレガ人間ナノデス コレガ人間ナノデス 原子爆弾ニ依ル変化ヲゴラン下サイ 肉体ガ恐ロシク膨脹シ 男モ女モスベテ一ツノ型ニカヘル オオ ソノ真黒焦ゲノ滅茶苦茶ノ 爛レタ顔ノムクンダ唇カラ洩レテ来ル声ハ 「助ケテ下サイ」 ト カ細イ 静カ…

曇りなき眼(まなこ)で見定める(「もののけ姫」)

「曇りなき眼(まなこ)で見定める」 「もののけ姫」(スタジオジブリ、宮崎駿監督、1997年) スタジオジブリのアニメ、「もののけ姫」で、主人公アシタカが発するセリフだ。人気の高い作品なので見たことのある生徒も多いだろう。 最新の兵器である銃に…

いわずに おれなくなる(まど みちお)

いわずに おれなくなる まど みちお いわずに おれなくなる ことばでしか いえないからだ いわずに おれなくなる ことばでは いいきれないからだ いわずに おれなくなる ひとりでは 生きられないからだ いわずに おれなくなる ひとりでしか 生きられないから…

埴輪(谷川俊太郎)

埴輪 谷川俊太郎 すべての感情と苔むして静かな時間とが 君の脳に沈殿している 眼の奥にある二千年の重量に耐え 君の口は何か壮大な秘密にひきしめられる 泣くことも 笑うことも 怒ることも君にはない 何故なら 君は常に泣き 笑い そして怒っているのだから…

図解雑学 名将に学ぶ世界の戦術

超おすすめ! 図解雑学 名将に学ぶ世界の戦術 家村和幸 2009 ナツメ社 内容、表紙・裏表紙より 世界の戦史における勝敗の決定的瞬間を解明することを目的に作られています。攻撃、防御、後退行動・遅滞行動、奇襲・急襲・強襲といった戦術それぞれを具体的な…

だんだん寒くなってきました。

田んぼをとびかっていた虫たちはすっかり見かけなくなりました。 動植物の減退こそ、日本の冬の美しさです。 命の衰えこそ、冬の空気が澄んでいる理由です。

ニコニコ生放送に負けた新聞社たち

お昼頃新聞を広げたら,ぶっぶっぶったまげた。 南日本新聞の政治面に,写真付きで次のような記事が大きく扱われていたからだ。 小沢氏,国会招致拒否 ネット番組で明言「司法手続き中」 民主党の小沢一郎元代表は3日、都内でインターネットサイト「ニコニ…

2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?

2ちゃんねるはなぜ潰れないのか? ひろゆき 2007 扶桑社 内容(「BOOK」データベースより) Web2.0に隠された真実を“この男”が読み解く。もう、これ以上、インターネットは社会を変えない。 メモ ○なぜ2ちゃんねるは潰れないか? 需要があるから。国家がコ…

思考停止社会 「遵守」に蝕まれる日本

思考停止社会 「遵守」に蝕まれる日本 郷原信郎 2009 講談社 内容(「BOOK」データベースより) 日本の経済と社会を覆う閉塞感の正体。相次ぐ食品企業の「不祥事」、メディアスクラム、年金記録「改ざん」問題、裁判員制度…コンプライアンス問題の第一人者が…

今年の夏、種子島。

もう四ヶ月くらい前ですが、種子島にダイビングに行きました。 その時撮った写真を適当に。 「浜田海岸」 [千座の岩屋]で有名 宇宙センター

いちき串木野市 虫追い祭

からから鳴る鈴に合わせて。 華やかに。 厄災なき稲の収穫が祈られた。 人よ、 自然よ、 社会よ、 安寧であれ。 ある人が言った。伝統芸能に込められた祈りはもう失われたと。 是、首肯也。 「科学」によって世界を理解する私たちはもう、 神々のいる大地を…