曇りなき眼(まなこ)で見定める(「もののけ姫」)

「曇りなき眼(まなこ)で見定める」


   「もののけ姫」(スタジオジブリ宮崎駿監督、1997年)


 スタジオジブリのアニメ、「もののけ姫」で、主人公アシタカが発するセリフだ。人気の高い作品なので見たことのある生徒も多いだろう。
 最新の兵器である銃に撃たれ、苦しみ暴走するイノシシの神。主人公、アシタカは村を救おうと、イノシシの神に最後の一撃を加えたため、イノシシ神の呪いを受ける。呪いの原因を追い、製鉄業を営む城にたどり着く。イノシシの神が銃弾を受けたのは、その城の主、エボシが、製鉄の燃料を確保するため、近辺の森を切り倒したのが原因だった。イノシシの神は森の復讐をしようとしたが、逆に返り討ちにあったのである。
 呪いの原因を知ったアシタカに、エボシは(これからどうするのか?)と問う。その際、アシタカが発したのが、「曇りなき眼で見定める」という言葉なのである。


 人間には限界がある。感覚器官の制約や考える傾向の制約、時間的、空間的制約から、全てのものごとを「知る」ことはできない。《正しい》「判断」をくだそうとしても、それは立場や文化、時代によってかわってくる。また、個人の力だけではどうにもならないことにも直面するだろう。
 しかし、よりよい生、よりよい社会をめざすために私たちは、「曇りなき眼で見定める」よう、努力する他ないのではないだろうか。「曇りなき眼で見定める」とは,自分なりに真摯に公平に,世界を見ていこうということだろう。それにはできるだけたくさんの知識を仕入れ、人の考えを聞き、そして自分なりに考えてみることが必要だと思う。その先に何があるのか分からない。残酷な現実か、あるいは人間性の希望か。ただ、よりよい生,よりよい社会のための、何らかの解決の糸口が浮かび上がってくるのだとしたら、この「曇りなき眼で見定める」という姿勢の先にあると思うのだ。