日本語の源流を求めて

日本語の源流を求めて
大野晋 2007 岩波

内容、カバー折口より

日本語は、いつ頃どのように生まれたのか。「日本精神」の叫ばれた戦時下、「日本とは何か」の問いを抱いた著者は、古典語との格闘から日本語の源流へと探究を重ねた。その途上で出会ったタミル語と日本語との語彙・文法などの類似を語り、南インドから水田稲作・鉄・機織などの文明が到来した時代に言語も形成された、と主張する。

感想

インド南部のタミル地方で使われるタミル語と日本語の共通点を指摘する。そしてタミルが、言語や文化習俗面において日本に影響を与えたと主張。
タミル語と日本語の共通点については、本書を読む限り確かに似てるなあ、と思うところ。これでもかこれでもか、と例示されていた。特に稲作や鉄に関する語彙で、共通点が見いだせることに関心を引かれた。

もっとも、疑問がいくつも浮かんでタミルが日本に影響を与えたという説は保留せざるを得ない。
例えば、
タミル地方の人間と日本人は、遺伝的にどうなの?
タミル地方が、日本の言葉や習俗に強い影響を与えたとして、なぜ歴史が書き残されるにいたって、その痕跡が史書に残っていない?
タミルと日本は、言葉や習俗が似ているというが、関係ない地域にだって似たような言葉や風俗はある。ほんとうに「日本とタミルは似ている」といえるほど、有意に両者は似ているのだろうか?

日本文化論に絶大な影響を与える説である以上、細かな検討が必要だろう。他の言語学者はどう思ってるんだろうねえ?