世界史のなかの戦国日本

世界史のなかの戦国日本
村井章介 初出1997 筑摩書房

内容、カバー裏面より

世界史の流れの中から日本列島を眺めると、意外な景色が浮かび上がってくる。群雄割拠の中から織田・豊臣を経て徳川安定政権を生んだ戦国時代。しかし15、16世紀の日本では、商業圏の拡大という別の覇権争いが始まっていた。サハリン・沿海州貿易を手中に収めようと画策する蛎崎氏、東南アジアにまで及ぶ西南海貿易で富を築いた琉球王国とその座を狙う島津氏、南蛮貿易のためにおたずね者まで取り込む松浦氏、当時の世界基軸通貨=銀貨をめぐり暗躍する倭人ネットワーク…。地域史をより広い視点で理解する「グローバル・ヒストリー」の先鞭をつけた歴史学の名著。

感想

鎖国体制をとった江戸時代。その前にあたるのが戦国時代である。当時のいきいきとした交流を整理。中国沿岸部や琉球、東南アジア、蝦夷地、オランダをはじめとするヨーロッパとの会合。物的人的両面にわたる活発な交流を指摘している。
ただ、本書は散漫な印象がぬぐえない。焦点はよいのだが、各項目の重要性が一歩引いた俯瞰的な視点から論じられておらず、全体を把握しづらい。例えば、銀の産出量が急拡大したことを整理している章がある。しかし、そのことが日本経済と世界経済とのつながりのなかでどのような影響を及ぼしたのか?、またなぜ銀の話を注力してしたのか?、銀は他の交易品のなかにあってどのような位置づけにあるのか?、他にはどのような交易品があるのか?、等々、論究すべきことはいっぱいあった。それがなされていない。部分と全体を見る視点が足りないのである。

メモ

ヌルハチは明が日本と戦争しているすきに女真族を統一。彼らはモンゴル族とは違い、農耕が主で狩猟採集が従であった。ヌルハチ豊臣秀吉の、「軍事行動を前提に編成された規律ある社会組織をもつことによる自信と自尊意識」は共通している。