検非違使 中世のけがれと権力

検非違使 中世のけがれと権力
丹生谷 哲一 原著1986 平凡社

内容、カバー裏面より

平安時代に設置され、軍事・警察を司った“令外の官”―長くそうした存在としてだけ考えられてきた検非違使は、じつは中世、天皇行幸や祭礼、大葬など国家的大行事の掃除を担当、キヨメを職掌とする中世被差別民を統轄し、ケガレを管理する権力だった。中世天皇制の特質を担い、中世身分制の形成に深くかかわる検非違使の全体像を描き出した名著が新論文を増補して再登場。

メモ

○これまで、検非違使の役割として治安警察、裁判、商業課税が着目されてきた。

もっとも検非違使の役割はそれらにとどまらない。検非違使は、皇居掃除や御幸、各種祭、各種仏事、各種公的行事に際し、神聖な場の穢物(主に死体)の掃除を、穢多非人を統括し担当した。また、検非違使を経由して貧しい非人に施しが与えられた。かつケガレの有無、種類の判定も行っていた。

以上より、検非違使には掃除および穢の統括者としての一面があり、ケガレとキヨメという構造の中核に位置しているとともに、中世の賤民制の形成に大きな役割を果たしたことがわかる。

○神社(祭)と内裏、換言すれば神と天皇が、穢をもっとも忌避すべきものとみなされていた。

○平安から中世にかけての非人は、ケガレをキヨメるという社会秩序を維持してゆくうえで欠くことのできない身分的集団であった。

○古代律令制度化では、後に非人と呼ばれる身分の者が戸主となっている例が少なくなく、なかには奴隷を所有していた者すらいた。このことから非人が穢れた身分として一般共同体から社会的に排除されるようになるのは、古代律令制度の次の歴史ステージである中世的社会になってからと考えられる。

感想

○2008年に出版された増補版を読んだ。

○大量の史料を根拠としてあげ、丁寧に論じている。

○豊富な史料があるのはいいがそのせいで冗長になっているという点と、章の名付けが下手くそな点と、章末の「まとめ」が要約になってない部分がある点から、大意を素早くつかみにくい。

章の名前や見出しの名前が内容の大意となるよう工夫し、よりわかりやすい要約を章末においてほしかった。

後、先行論とどう違うのか、もっと意識的に記されていると良いと思った。