PISAに対応できる 「国際的な読解力」を育てる新しい読書教育の方法 アニマシオンからブッククラブへ

PISAに対応できる 「国際的な読解力」を育てる新しい読書教育の方法 アニマシオンからブッククラブへ
有元 秀文 2009 少年写真新聞社

内容(「BOOK」データベースより)

遊びやゲームを取り入れた読書教育の方法である「アニマシオン」と、同じ本をグループで読んで、読んだことについて質問に答えさせたり話し合ったりさせる読書教育の方法である「ブッククラブ」。どんな子どもでも本好きになる読書教育の方法を、詳しく具体例を挙げて紹介する。

メモ

PISAのアンケートによると、日本の子供たちは他国の子供たちに比べて、本を読まない。p3

PISAの読解力テストは、書いていることだけでなく、自分の意見を表現できるところまでもとめている。日本の国語教育はそのような主体的な読みではなく、受け身な読みしか指導していない。p15

日本人は質疑応答(疑問点や反対意見を言い合うこと)が苦手。p40

感想

○本書で述べられていることは昔から賛成していて、自分の問題意識の中心であった。

○欧米の例がいくつか紹介されていて参考になった。
しかし実践例も少ないし、クリティカルシンキングの重要性を説いているところも常識的な意見を述べているだけで中身がない。論に深まりがあるとはいえない。

また、反対したい点もある。
一つは、(日本の教科書掲載の小説はアンハッピーエンドがよくある、日本の小学生はそれを「喜ぶのでしょうか?」)、という主張。
理由をはっきり述べていないし不明瞭な言い方で言及しにくいが、著者は日本の学習教材にアンハッピーエンドの小説が使われていることを批判している。
しかし、登場人物たちがすれ違ったり、過酷な現実が突きつけられアンハッピーエンドになる小説こそ、現実の社会や人間性を多面的に理解する上で重要なのではないだろうか。
むしろ小学生だからといってハッピーエンドの小説を読ませておけばよい、とすら読める著者の主張は、日本の子供たちをバカにしたものだと断じたい。

○本書が誰に向けて書いているのかよくわからなかった。まあ、読書教育に携わる者に向けて書いているようで、国語教師か学校図書館司書を想定しているのだろう。
そのどちらに向けても本書は書かれているように思えた。

なお、図書館司書に限定して話をさせてもらうと、その立場から学校教育を変えようというのは現状、大変厳しいと思う。
高学力の生徒は大学入試をみて勉強している。その善し悪しはどうあれ、これが現実だ。教育を変えたいなら大学入試を変えることを目標にすべきだ。

そもそも図書館司書が学校教育を変えたいと思い、その立場で変えようと思うのなら、司書も学校運営に大きくコミットするべきである。

どの教諭も自分の教科指導だけでなく、校務分掌として学校運営に関わる多くの仕事が舞い込み忙しく働いている。そんな中で図書館に引きこもり、ほぼ図書館運営にだけ注力している司書が多い現状では、だれも司書の話は聞くまい。

司書教諭の方も生徒の学習指導にコミットできるような体制づくり、システムづくりが必要だと思う。