人類の歴史を変えた8つのできごと

人類の歴史を変えた8つのできごと
『人類の歴史を変えた8つのできごとI 言語・宗教・農耕・お金編』
『人類の歴史を変えた8つのできごとII 民主主義・報道機関・産業革命原子爆弾編』
2012 眞淳平 岩波

内容、出版社ウェブサイトより

人類が文明を持つようになってから現在までの間に起きた,人類史を根底から変えた大きなできごとを紹介.Ⅰ巻では,言語,宗教,農耕,お金を取り上げます.発生・成立から伝播の過程,人々に与えた影響や意義,そして未来への展望まで,1万年以上に及ぶ人類の歩みを独自の切り口でまとめあげた人類文明史.
Ⅱ巻では民主主義の歴史,報道機関の役割,産業技術の発展,戦争の歴史を取り上げます.人間社会にとって欠かすことができないこれらの出来事がどのように成立し,どのように発達してきたのか,豊富な資料をもとに長い人類の歩みをわかりやすく解説します.

メモ

ユダヤ人たちの場合も、国が滅亡させられ、神殿が破壊される、という最悪の事態が起きました。ほかの民族であれば、これは「神の力不足」を意味しており、自分たちの神を、頼むに値しない神だと考えるようになるかもしれません。しかし彼らは、そうは考えませんでした。自分たちが苦難に遭ったのは、自分たちの信仰が不足していたためであり、その責任はすべて自分たちにある、と考えたのです。そして彼らは、自分たちこそは神に選ばれた存在であり、最終的には救われる、と信じ続けました。
 このことは、ユダヤ人とその宗教の、非常に大きな特徴だといえるでしょう。」p102

(初期仏教では、高度な論理の学習と瞑想などの実践が重要視。しかしそれでは、一般の人々が悟りを開き救われるのは難しい。そこから大乗仏教という、呪術的な要素が加わった、経文を持ったり一心に祈ることで救いが得られる、という考えが導入された。)p164

「どの宗教も、独立して存在しているわけではなく、ほかの宗教や社会・政治情勢などの影響を多分に受けながら、生まれそして変化していく」p167

(中世のヨーロッパでは教会の規制によってキリスト教徒はキリスト教に、利子付でお金を貸すことができず。ゆえに利子付でお金を貸すことのできるユダヤ教徒ユダヤ人が、金融業として大きな成功をおさめる)p224

(産業革命 = 機械化+蒸気機関による動力革命)p138

(ある特定の発明→関連産業における需給のバランスが崩れる(品不足・人あまり)(例:紡績機)→これを解消することがビジネスチャンスになるため、解消しようという動機が発生し産業や技術が促進)p139

(近世以前の戦場で勝ち負けが決まる状況 → 戦場のどこか一部で一方の兵士が劣勢になり、恐怖心から逃げはじめると、戦線全体が瓦解して敗北になる。)p182

(近代以降、徴兵制や戦争のための経済統制により、一般の人々にも戦争が身近な問題に。)p212

(ナポレオンは、兵力を分散するのではなく、敵の弱点に自軍の兵力を集中して大量に投入し、相手を圧倒して勝利する、という手法をとった。これが大成功した。)p216

感想

タイトルにもあるが、「人類の歴史を変えた8つのできごと」として「言語」「宗教」「農耕」「お金」「民主主義」「報道機関」「産業革命」「原子爆弾」をとりあげ、その歴史や、どのようにどのような影響を与えたかということを整理している。
有名なトピックスを扱っているということもあり、僕にとっては既に知っているのことがほとんどであったが、そのなかでも2、3知らないこともあり、勉強になった。

再度人類の歴史を俯瞰的におさらいする上では良い読み物だと思う。

人類の歴史を大きく変えたものとして8つを選んでいるわけだが、特に後半とりあげたものについては、別なトピックスもあり得ると考える人が多いんじゃないかなあ、と思った。「報道機関」は、「民主主義」にふくめてよいと思うし、「原子爆弾」の章は戦争の歴史についてまとめているので、「総力戦」などというネーミングの方がよかったのでは、と思った。

なるほどな、と思った他者の指摘

ポイントは、その「起こり」(起源)だけではなく、一つのテーマで世界史全体を古代から現代まで一刀両断しているところ。例えば「言語」なら、コトバの始まりから「グロービッシュ」や少数言語の消滅まで、「報道機関」なら古代ローマの壁新聞からインターネットの台頭まで、といった具合に、いわば世界史全体が8回にわたってなぞり直されているわけなのだ。
自治体職員の読書ノート:【1359冊目】眞淳平『人類の歴史を変えた8つのできごと』」
http://d.hatena.ne.jp/hachiro86/touch/20120706