フランクリン自伝

フランクリン自伝
ベンジャミン・フランクリン(原稿執筆) 松本 慎一,西川 正身(訳) 1957 岩波

内容、表紙より

科学者であるとともに出版業者、哲学者、経済学者、政治家、そして何よりもアメリカ資本主義の育ての親であったフランクリン(1706‐90)。その半生の記録がここに淡々とつづられている。アメリカ建国にあたって大きな役割を果たしたフランクリンの生涯を知ることは、今日のアメリカを理解するためにも大いに役立とう。

感想

ベンジャミン・フランクリンは1771年、息子のために自伝を書く。それがいろいろなところを経由し、20年後にフランスで初めて出版された。それが本書だという。

フランクリンは13歳のとき、印刷会社の年季奉公になったことから以後、印刷業界を中心に働く。17歳のとき、フィラデルフィアへ出奔。勤勉で堅実な仕事ぶりにより周囲の信頼を得、実業家、政治家として活躍する。社会問題を協議するクラブをつくったり、病院や図書館建設に尽力。一日一日をどう向上していこうかという問題意識の高さと、手帳を使って毎日問題点を反省するというその実践力はすごい。独立戦争時には、政治家として対外交渉で活躍。独立宣言の起草委員の一人。アメリカ合衆国の最高額紙幣の顔でもある。アメリカ建国における評価の高さがうかがえるだろう。
「勤勉性、探究心の強さ、合理主義、社会活動への参加という18世紀における近代的人間像を象徴する人物。己を含めて権力の集中を嫌った人間性は、個人崇拝を敬遠するアメリカの国民性を超え、アメリカの父として讃えられる。」
(ウィキペディアベンジャミン・フランクリンの項)
http://ja.wikipedia.org/wiki/ベンジャミン・フランクリン

本自伝は非常に有名。それはフランクリンが努力し、思考し、よりよい地位に上りつめ、そしてよりよい社会をつくっていこうとする物語であるのと同時に、アメリカが自由を尊重する移民の活躍により発展し、ついにはイギリスから独立を勝ち取るというアメリカ建国の物語でもあるからだろう。解説には「アメリカ資本主義の揺籃史」という指摘があった。

○当時のアメリカの様子、社会情勢、対外関係などがわからないので読みにくい部分はあるが、まあそれは仕方ないかもしれない。

○軽妙な文体。うぬぼれは自分にも関係者にも役立つことがある、だからうぬぼれを与えた神に感謝したい、と書いたりする。自分の書いていることはうぬぼれだな、という若干の皮肉が見て取れるのと同時に、自分への自信、いい意味での自己愛がうかがえる。これはとても大事なことだ。好々爺だったに違いない。

○フランクリンの自伝を読んでいて思うのは「個」がしっかりしているなあ、ということだ。自分が大事だと思うことがその行動の根底にあり、そのために議論すること、行動することをためらわない、いとわない。そして上に書いたけれど、とても自分を大切にしている。自分に誇りをもっている。
「もしもおまえの好きなようにしてよいと言われたならば、私はいままでの生涯を初めからそのまま繰り返すことに少しも異存はない」p8、とまで言いきる。

もちろんこれは大げさに言ってる部分もあるのだろう。でも、こうまで言いきる、自分は自分の人生を全力で生きた満足できた、と言える。このように、自分を絶対的に肯定することも大切なことである。

私もかくありたい。