民主主義という不思議な仕組み

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民主主義という不思議な仕組み
佐々木 毅 2007 筑摩書房

内容(「BOOK」データベースより)

誰もがあたりまえだと思っている民主主義。それは、本当にいいものなのだろうか?この制度の成立過程を振り返りながら、私たちと政治との関係について考える。若い人のための政治入門。

感想

○民主主義の歴史やその問題点について整理、分析する。
私たち現代日本人は、民主主義の大いなる恩恵を受けている。基本的に自由に考え自由に行動できる。民衆が主体となって政治・社会を決めることができる。その民主主義は発生した当初、どのように考えられてきたのか? そして、民主主義の弱点とは何か? それを補い克服するにはどういうシステムをとる必要があるのか?
私たちの在り方に直結する非常に重要な問である。とても勉強になった。
書いてあることは基本的なことが多いけれど、復習としてもう一度、民主政治がどのように運営されていて、気をつけるべき所はどこか確認するのにいい。

○(おもしろいな)と思ったのが、タイトルをみても分かるとおり、民主主義を当たり前の、当然のものであるととらえるのではなく、「不思議な仕組み」、つまり珍しい統治形態という発想から出発している点である。実際、今でこそ民主主義は代表的で採用数の多い統治形態だが、歴史的にみればほとんどの統治形態は専制政治であった。
この発想から出発すれば、民主主義の理念が当然のものではなく私たち民衆が考え維持していかなければならないものであるという姿勢が生まれる。また民主主義は完璧な政治体制などではなく、同じように私たち民衆が考え改善していかなければならないものであるという姿勢も生まれる。

ギリシャ都市国家ポリスで発生した民主主義の理念(もっとも、民主主義の理念に反する奴隷の存在によってポリス維持されていたが)。民主主義が当時のギリシャでどのように考えられていたか、またギリシャの敵で専制政治をしいていたペルシャがどのように考えていたか、ヘロドトスの「歴史」やトゥキディデスの「戦史」を引用しながら整理している。紀元前400年以上前の文献だが、自由を重んじ自由に誇りをもつギリシャの姿勢に驚かされた。とてもそんな古い文献だとは思えない。
また、民衆が自分たちで民主主義を、ついぞつくり上げなかった日本の歴史に思いをはせながら、うまく言葉にできないけれど感慨深いものを感じた。

○ところどころ絵で本書の内容を図式化してあって、ちょっとしたことだけど、すごく分かりやすくなっている。

メモ

(古代ギリシャのポリスの人々は、ペルシャのように大王といった特定の人物ではなく、「自由」に基づく「法」というルールに服従していた。)p22

(民主主義の問題点と考えられたもの。
1、大衆がはびこり自分の都合だけを考え法の理念をねじ曲げ、また非合理的な政策判断をするのではないか。
2、広い地域を統治できないのではないか)p35

(アメリカは、ヨーロッパ人が移入してくる当初、自由を求める人々の希望の地だった。そこに伝統的な身分秩序はなかった。
そのため、民主化に伴う悩みが少ない一方、「民主政治に内在する悩み」に早くから直面した)p47

「民主政治は有権者が横着を決め込み、無闇にわがままを言ったり、無理なサービスを政治家にもとめたりする政治ではありません。有権者自身が自ら努力することによって、世論を変えていくこと、あるいは成長させていくものであることを忘れるならば、民主政治は怠惰を煽るような政治体制になってしまいます。」p112

(自分が反対する政策に唯々諾々と従ったり、投票してはい終わりにするのではダメだ。国民がシステムはどうあるべきか考え、しっかり自己主張していくことが大切。)p140