シュメル 人類最古の文明

シュメル 人類最古の文明
小林 登志子 2005 中央公論新社

内容、カヴァー折口より

五千年前のイラクの地で、当時すでに文字やハンコ、学校、法律などを創り出していた民族がいる。それが、今までほとんどその実像が明らかにされてこなかったシュメル民族である。本書は、シュメル文明の遺物を一つ一つ紹介しながら、その歴史や文化を丹念に解説するものである。人類最古の文明にして現代社会の礎を築いた彼らの知られざる素顔とは―。多様かつ膨大な記録から、シュメルの人々の息づかいを今に伝える。

感想

最古の都市文明として現在のイラククウェートの地に栄えたシュメル文明についての本。
楔形文字が記された粘土板は、紙と違い超長期保存には向いていたようだ。遙か昔に栄え、そして遙か昔に滅んだ文明にも関わらず、当時の粘土板が結構残っている。楔形文字は多数の言語で用いられたということもあり、楔形文字の解読は完全ではなく、発掘された粘土板全ての解読が終わったわけではないという。
それにしても、行政組織をもち、広範囲に交易し、行政官を育成するための学校まであり、シュメル文明が、「都市」文明であることを改めて思わされた。

シュメルの地ではラピスラズリという青い鉱物が、宝石として珍重されたという。どんな石だろう?

シュメル人・アッカド人は、各都市を統べる王はむろん、それより何より各都市を統べた神に従っていたようだ。

シュメル人(・アッカド人)には、特定の個人を守護する「個人神」と呼ばれる神がいたという。粘土板には、王の手首をつかみ、王の代わりに都市神に祈る個人神の姿が描かれていた。これをみて、ジュリアン・ジェインズの、〈古代の人々は、はっきりとした自意識・内観・自由意志を持たず、これまでの経験が導き出した行動指針を神々の声として聞き、これに従って行動していた〉という指摘を思い出した。ジェインズの主張を裏付けるのではないだろうか。(もしかしたらジェインズは、「個人神」の存在を主張の根拠にしていたかもしれない)
参照↓
http://d.hatena.ne.jp/skycommu/20090505/1241522414

著者はときに、人間に深く根付く差別意識などを皮肉っぽく語る。その皮肉は古シュメルだけではなく、現代日本も引き合いにされ、人類全体への皮肉として普遍性をもっている。