特殊清掃 死体と向き合った男の20年の記録
特殊清掃 死体と向き合った男の20年の記録
特掃隊長 初出2012 ディスカヴァー・トゥエンティワン
内容、出版者ウェブサイトより
人気ブログ『特殊清掃「戦う男たち」』待望の書籍化!!
本書は、特殊清掃を行う「特掃隊長」と呼ばれる男性のブログをまとめたものである。
「特殊清掃」とは、遺体痕処理から不用品撤去・遺品処理・ゴミ部屋清掃・消臭・消毒・害虫駆除まで行う作業のこと。通常の清掃業者では対応できない特殊な清掃業務をメインに活動している。
孤立死や自殺が増え続ける、この時代。その凄惨な現場の後始末をするなかで著者が見た「死」と、その向こう側に見えてくる「生」のさまざまな形は、読者を不思議な感動に誘う。
感想
○人が死んで、それが放置されるとどうなるか。普段、考えたこともないようなことをつきつけられる。
人間の大半は水でできている、というのはよく聞く話だ。サントリーのウェブサイトによると成人の約60%は水分だという。
死んだ瞬間から、その水分を中心とした循環が終わる。あまねく体をかけめぐり、重力に逆らってヒトの形態を維持してきたその循環がとぎれてしまう。最後の一呼吸で、偉大なサイクルを成り立たせていたエネルギーの供給が途絶えてしまうのである。
さて、そうして循環が終了し、そのまま放置されると体はどうなってしまうのか? 本書はその結末をはっきりとイメージさせる。
めぐる力のなくなった水を中心とした組織は、これまで逆らってきた重力にしたがって、じんわりと体からしみ出す。髪や骨、歯といった、一部の強固な組織を除き、どろどろになっていく。また、抑圧から解放されたまつろわぬ細菌どもが暴れまわり、強烈な腐臭を放つ。体中にウジがたかり、大量のハエが飛びまわる。
腕を前につきだし、そうした事実を我が身に重ねてみる。そうすると循環の偉大さ、それを成立させている生命の不思議さに思いがいたる。
○「特殊清掃」という特異な−−しかしある意味、身体にとって極めて密接な−−仕事の様子がわかり、勉強になる。凄惨な現場で悪戦苦闘して働いている人々に対して頭が下がる。
○じゃっかん説教くさく、それが僕のようなひねくれ者には鼻につく。しかしこれだけ「死」とその周辺にあるさまざまな人間関係を見つめてきた著者だ。
家族の大切さ、
本当の友人とはどのようなものか、
死をふまえて前向きに生きていくこと、
運命の不可思議etc,etc。
どれも説得力があって、重たくのしかかってくる。