申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。
申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。
カレン・フェラン 著,神崎 朗子 訳 2014 大和書房
内容、カバー折口より
「戦略計画」「最適化プロセス」「業績管理システム」…こうして企業は崩壊する。デロイト・ハスキンズ&セルズ、ジェミニ・コンサルティングと、大手コンサルティングファームを渡り歩いてきた実力派コンサルタントが、自らとコンサル業界が犯してきた恐るべき過ちの数々を大暴露。物議を醸す話題作!
感想
「訳者あとがき」で指摘されているとおり、たんにコンサルを批判するというよりも、「コンサルティングファームによる従来のコンサルティングの問題点を指摘したうえで」「コンサルティング業務の望ましいあり方」、「クライアントとコンサルティングの正しい付き合い方」を述べている。
本書の主張をがーって短くまとめると次の二つに要約できると思う。
・一つは、経営をしていくうえで自分の頭で考えることが大切だ、ということ
・もう一つは、各セクション間でそしてその中でも、しっかりコミュニケーションをとることが大切だ、ということ。
いずれも常識的な結論かもしれない。しかし本書が述べているのは、コンサルの提唱するツールでものごとがすっきりうまくいくわけではなく、考えること、話し合うことを地道に積みあげていくほかない、ということだ。
刺激的なタイトル(日本語訳するうえで販売上の点から過激な書名にしたのかな、と確認したところ原題の直訳だったw)ではあるが、コンサルの主張がいい加減(非科学的)であったことを述べるにとどまらず、コンサルタントとの賢い付き合い方や企業運営について丁寧に述べており、中身のある良い本だったな、と思った。
メモ
○会社経営において、将来を予測するのは極めて困難。多くのエリートたちが予測をはずしてきた。
○そのようななかで大切なのは「計画」そのものではない。計画をたてる過程にこそ価値がある。計画をたてるために業界や経済の動向、あたらしいテクノロジー、自社あるいは競合他社の強みや弱み、規制の変更、従業員の声、消費者の声を集め、考えをしぼって知識や知力を磨くことが大切である。そのような取り組みをしっかり行っているからこそ、チャンスに気づき、また情勢の変化に柔軟に対応できる。
自分たちの代わりにコンサルに考えさせ、そうしていただいた「計画」に従うという視点では全然ダメ。
○少数の人間が先頭に立ってすべてを決定するのではなく、十分な情報を獲得し、それをきちんと共有することで、よりよい意志決定ができる基盤をつくることが大事。
○方法論・ツールに頼りきるのは危険。あくまで関係者が連携し協力し、解決策を考えていくことが大切。
○数値によって社員を評価し、給料や昇進等に差をつける「業績管理システム」にはいくつか問題点がある。
・社員の期待値より評価は低くなりがちで、社員のやる気をそいでしまう。
・管理職による評価業務は非常に煩雑。
・公平な評価など不可能。
業績を向上させるうえで重要なのは、「上司と部下(そして同僚間)のコミュニケーション」をしっかりとり、「日々のふれ合いのなかで指導やフィードバックを行」うこと。
○マネジメントについていろいろいわれているが、これだと決まったテクニックがあるわけではなく、結局は「人」。自分のつとめを果たし、周りの人たちと良い人間関係を築く。これが大切。マネジメントモデルというツールに振りまわされることなく、どうやったらいい仕事ができるか、部下たちと一緒に話し合うことにこそ価値がある。
○リーダーシップについてもいろいろいわれているが、それら理論はとても科学的論証に耐えうるレベルでない。もっとも1ついえるのは、「何が何でも成功してやる、というやる気や意志」がリーダーには必要である。