大絶滅 遺伝子が悪いのか運が悪いのか?

大絶滅 遺伝子が悪いのか運が悪いのか?
デイヴィッド・M. ラウプ(著) 渡辺 政隆(訳) 原著1991 平河出版社

内容、カバー折口より

生命が誕生してから35億年。その間に進化した生物は500億種。一方、現在の地球に生息するのは4000万種あまり。まさに99.9パーセントが絶滅したのだ。進化の歴史は絶滅の歴史にほかならない。迫りくる絶滅の足音…われわれは歴史から何を学び、活かすべきなのだろうか。

感想

生命の進化を考えるうえで、その「絶滅」に着目して論じた本。著者曰く、この地球上に誕生した種は、そのほとんどが絶滅したという。なるほど、冷静に考えればアタリマエかもしれないが、「絶滅」に対するイメージをぐらつかせる発想だ。

本書は「絶滅」を考察するうえで考古学資料はもちろん、数理モデルを導入して検討している。それはシンプルかつあざやかで、興味をひきたてられた。

適応の面で劣っていたからか、それとも運が悪かったから絶滅したのか、という問いをたて、「絶滅」が進化の原動力となってきたことを明らかにしている。著者によると、多くの種は地球環境の激変に対応できず絶滅するという。そうした激変はこれまでの進化の過程からは想像もできないもので理不尽以外の何ものでもない、ようは運が悪くて絶滅した、といえるそうだ。
しかしそうした大絶滅がおき、ニッチが空くことで、新しい体の構造や新しい生活様式といった進化上の革新はもたらされてきた。また、そうした進化上の革新は、祖先グループの特殊化していない種からおきることが多いそうだ。

メモ

○理論から考えても観察事実から考えても「種」に関して次のことがいえる。
・ほとんどの種と属は短命。ごく成功したものが脈をたもつ。
・ほとんどの種の個体数は少ない。
・ほとんどの属の種数は少ない。
・ほとんどの種は、地理的に狭い範囲にしか分布していない。
・個体数が多く、また広範囲に生息している種もいるが(私たちがよく見かける種)、それは全体から見たら驚くほど少数派。