日の丸の翼 日本陸海軍の航空軍備

日の丸の翼 日本陸海軍の航空軍備
古峰文三 解説・監修 2013 学研パブリッシング

内容、出版者ウェブサイトより

雑誌『歴史群像』で連載中の人気企画が単行本化。佐竹政夫氏の迫力イラスト、古峰文三氏の鋭い解説、胃袋豊彦氏の精緻な三面図という強力トリオが、日本軍用機の数々を詳解する。収録機体は陸海軍の運用思想に則るかたちでセレクト。各種データも充実の一冊。

感想

・戦闘機はもちろん、爆撃機雷撃機偵察機など、幅広い機種をとりあげている。陸軍にしろ海軍にしろ、多くの機種を開発したことは知られていると思うが、本書はそのなかでも、戦力として活躍した機種をとりあげている。たとえ性能は地味だったとしても、必要な時期に必要な戦力として一定量の戦力を提供できたか、という視点で評価しているのである。

・本書を読んでいて、どの飛行機にも「物語」があるんだなあ、と感じさせられた。それぞれ、軍部による戦略レベルの目的、もしくは現場による戦術レベルの目的がある。飛行機の開発には多額の資金と多くの時間がかかる。当然それぞれの飛行機が開発されるにいたっては、なにがしかを実現したいという明確な目的があるわけだ。そしてその目的にしたがって、飛行機のどこにどれだけの性能を要求するかが決まってくる。それをあらためて考えさせられた。

戦場をよく考慮して、なにがしかの目的をもった飛行機が求められる。それにしたがって飛行機がつくられる。軍の要求をギリギリで満たすことができた飛行機もあれば、それを平気で実現しえた飛行機もあった。新機軸を多用し開発が難航したものもあれば、これまでの技術の蓄積をいかして、いがいとあっさりと開発しえたものもある。
そうして多くの期待を背負って飛びたった飛行機は、その目的通り己が力を十分に発揮したものもあれば、戦場で求められるパワーが変わり当初予定した意図を実現できなかった機体もある。なかには、予定外のことで活躍した飛行機もあった。
そういうの全部ーー軍部の構想(夢、野望)から飛行機開発の実際、そして活躍の是非、めまぐるしく変化する戦場、それに伴う任務の変化、活躍度合いの変化ーーひっくるめて「物語」だと思うのだ。翼をたたえ夢を背負って空を飛ぶ優美な戦闘機械。そんな彼らを主人公とした。

メモ

・ロンドン軍縮条約で、補助艦艇までふくめて水上艦艇部隊は制限をうけアメリカ太平洋艦隊に対抗できなくなった。ここでアメリカに対抗するため、海軍航空隊は陸上航空兵力の拡充が開始され、太平洋戦争期には事実上の空軍に変貌。

・大戦初期に圧倒的な活躍をみせたゼロ戦も、当初は初期不良・欠陥が複数あった。

・海軍の「ゼロ戦」と違い、陸軍の「隼」に防弾装備が導入されたのは、実戦経験の差。海軍がそれまで相手をしていたのは正面対決を避ける中国空軍。一方、陸軍はソ連空軍を相手にノモンハンで戦い、消耗による崩壊の一歩手前まで追いつめられた。この経験の差が両機体の違いにつながった。

・日本陸海軍機の特徴はその航続距離の長さ。それは陸軍は大陸奥地の航空撃滅戦のため、海軍は哨戒時間の長さや敵航空兵力のアウトレンジから攻撃するため。これが実現できたのは日本の空冷エンジンが巡航時の燃料消費削減に力を入れていたから。逆に他国のエンジンに比べ、全力運転時の燃料消費は多い。