零戦 設計者が語る傑作機の誕生

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零戦 設計者が語る傑作機の誕生
堀越 二郎,奥宮 正武 初出1952 学研パブリッシング

内容、裏面より

わが国の航空技術の粋を結集して開発された傑作戦闘機「零戦」。この名機の設計主務者である堀越二郎氏と元大本営海軍参謀奥宮正武氏は、戦後間もない時期、膨大な資料と実体験に基づいて零戦のすべてを記録することを試みた。九六艦戦、零戦へと至る堀越氏の技術的挑戦とは?また、日本海軍航空の栄枯盛衰の陰にあったものとは?貴重この上ない証言と資料・写真を満載した古典的名著。

感想

朝日ソノラマの戦記シリーズにも入っていた本で、本書はそれを改題したもの。

欧米をまねることからはじめた日本の航空技術が、欧米にキャッチアップした96式艦戦。そしてついに太平洋戦争初期に圧倒的性能を見せつけたのがその後継機、「零戦」である。本書は零戦開発前夜の日本の航空業界の様子から、零戦の開発、その華々しい活躍、そしてその後太平洋戦争中に生み出されていった各種軍用機について述べている。
戦闘機に興味のある人には強くおすすめできる本だ。
零戦について述べた本は、文字通りあまたあふれんばかりであるが、本書は出版の古さや執筆者をみてもわかるように、それらの種本とも言えるべき本である。世に知られる零戦にまつわる各種エピソードは、本書に多く載っているところだ。

なお、本書内容は「零戦 その誕生と栄光の記録(初出1970)」http://d.hatena.ne.jp/skycommu/20140907/1410049454とだいぶかぶる。

メモ

・本書は、記憶や記録が散逸しないうちに航空関係の史実的な書き物を世に残しておく目的で計画された。p11

・海軍の先覚者たちによって、日本の航空産業の自立を目指すことが打ち出されてから早くも5年後の1936年以降、機体、発動機ともども日本人の手による高い性能をもった海軍新鋭機が続々と誕生。(96式艦戦など)

・外国の飛行機はカタログスペックに対して、実際の性能がかなり低かった。

・海軍機のもつ優秀な性能、特に長大な航続力により、陸海の第一線の後方深くに侵入して攻撃するという従来の兵術観念による海戦にも陸戦にも属さない、新しい航空戦なるものが存在することを示した。

アメリカに比べ、日本軍は基地設営能力、機材補給能力が非常に劣っていた。

アメリカ軍潜水艦による海上交通路破壊、陸海軍機による工場空爆地震により、日本の軍用機生産は阻害されていった。

・旧日本軍は戦訓による設計変更が多く、それに人的資源が奪われ、真に有効な改造のテンポは遅かった。

・故障が多かったのは発動機。その次が足まわり。

・太平洋戦争中、日本は試作機を多数開発したが、優秀な生産機として結びつけることができたのはごくごくわずかで、多くの技術開発資源を無駄にした。