「退化」の進化学 ヒトにのこる進化の足跡
おすすめ!
「退化」の進化学 ヒトにのこる進化の足跡
犬塚 則久 2006 講談社
内容、カバー裏面より
サメの顎が退化した耳小骨、トカゲの眼のなごりの松果体、舌にのこる「二枚舌」の痕跡、男にもある「子宮」、サメ肌から生まれた歯など、祖先とは機能を変えたり、失ったりした器官をみれば、ヒトの進化の道をたどることができる。
感想
○人間の体に残っている「退化器官」や「痕跡器官」を整理した本。
おもしろいかった!
人間には退化しつつある器官がたくさん残っている、という。それを追いかける「旅」は、必然的に人類の進化の歴史を追っているかのようだ。なぜなら、「退化器官」、「痕跡器官」を探ることは、私たちの先祖の在りし日の姿、生きざま、生存戦略を明らかにするからである。
また、人類が進化の一つの枝の先っぽにいることを考えると、人類進化の歴史を追うことは、生物進化の歴史、その大筋を追うことができる、といえるだろう。
本書はそれをたぶんに意図している。より古い痕跡順に解説をしているからである。
生物進化の歴史を見ていくと、環境の変化にいかに生命が対応してきたか、おもわず感嘆してしまう。そしてその歴史は知らず、自分の身にも刻まれていたのだ。なんてロマントゥィックなお話!
○個体発生は系統発生をくり返す、という有名な言葉がある。胎児の発生、成長は、人類の進化の歴史をなぞっている、ってやつ。いろいろな動物の発生を比較して並べた図は有名だ。これはマジみたいで、外面だけでなく体の中の部分もそうみたいだ。本書にはその例が多数出てくる。
(エラ穴が耳穴になったり、首になったり、骨の移動、血管の発生、盲腸のサイズ、精巣の移動、などなど)
メモ
○エラの穴が、地上で生活することによって不要になり、耳へと進化。
○首は上陸してエラ蓋がはずれてできたくびれ。元は両側にエラ穴が空いていた場所。
○ほ乳類は臼歯が発達 = 食物をすりつぶす咀嚼により消化効率up = 恒温を保つエネルギーを得られるようになっている(変温動物に比べ恒温動物は、エネルギーが10倍必要)
○食物を取り入れる道と酸素を取り入れる道の分化 = 丸呑みせずとも息ができるので咀嚼できる
○退化器官の特徴として、人種や個人によって変異が大きかったり、幼児期(あるいは胎児の状態)にのみ発達し徐々に無くなっていくことがあげられる。
○人間の奇形のなかには、退化器官が表れているものがある。
○人間にとって退化しつつある(あるいは退化した)器官
・犬歯
・歯の数は減少
・下の肋骨
・耳殻
・瞬膜
・発情のサイン