アド・バード

アド・バード
椎名誠 1990 3 25 集英社


 椎名誠の描く来なかった近未来。


[あらすじ]
 舞台は凶暴な虫たちのうごめく不気味で荒廃した世界。


 主人公安東マサルは、弟菊丸と共に父を捜しにマザーK市へ旅をする。


 苦難の末たどり着いたマザーK市は異常に発達した広告に浸食されていた。ありとあらゆる壁面、ありとあらゆる空、ありとあらゆる海、ありとあらゆる動物。


 そこで見る驚愕の真実。それはターターさんとオットマンによる激しい広告戦争の末、人っ子一人いなくなったマザーK市の無惨な姿と不毛の歴史だった。


 世界は広告のためにある。ホテルから、機械から、天空から、海から、生物から、そして人に至るまで広告にされていたのだ。


 人間の脳髄を埋め込まれた悲しき広告鳥(ぎゃーぎゃー宣伝をわめいたり、空に集団で宣伝文字を作ったり、敵の虫を始末する)、アド・バードが飛び交う世界で見つけた父もまた、脳髄を機械に埋め込まれオットマン側として海を静かに監視していた。


 マサルたちは父に別れを告げ、希望を胸に新たな世界へと飛び立つ。


〔雑感〕
 アイデアはすっごくすっごくいいんだけれど、この特異で魅力的な世界の構築がまだまだ。きちんと完成されていない。なによりSFは世界観が大事だから。 まあ、父親探しっちゅうストーリーも中途半端だけど。


《20060420の記事》