写真
清色城にて。 子どもが木登りできるようにか、縄が吊してあった。 永い間、雨風をうけた縄は美しい。木肌に生えている苔も、世界の風化を祝福している。 あの縄を手にとる子らは、あと何年いるだろう? 清色城は、鹿児島県薩摩川内市入来町にある中世の山城…
7代目、ホンダのアコード。 車こそ、私たちが今生きる、【【近代】】の象徴だと思う。 石油を燃やし、それを莫大な運動エネルギーとして取り出したものを、「個人」が使っているから。 音楽をかけながら自由気ままにドライブしていると、鋼の巨体を動かす力…
人が帰るところ 波の音 潮の香 冷たい水 ひとたび足をつければ、ほらそこは
なみなみと岩陵をつたっていくと、頂上に着く。 眼下に広がるのは鹿児島県、旧大浦町。 23の冬。54の冬。僕は、亡くなった祖父が生まれ育った町を見ている。 僕はペンタックス。父はキャノン。 カメラは僕のが高級だけど、レンズは父のがいい。
双子だった。一匹は生まれてまもなく死んだ。 僕が近づくと、すぐ母親の陰に隠れようとするんだな。 壁から向けられた白熱電球が暖かい。人間がつくったものも、ときとして悪くない。 陰影をまとった雲がまわる。小屋の外は雨だった。 フィラメントが包むこ…
「人間には、あるがままの本当の世界を認知して、正しい判断をくだすことなんて、絶対にできないんだよ!」 人間の腰ほどの高さの笹に覆われた標高250メートルほどの山頂に立ち、ぽつぽつと雲の流れる澄みきった青空と、笹で一面覆われた薄緑色の島と、ち…
男2人で小さな島を旅行した帰り。 島は、人口100人とちょっとで、しいていえば、ヒョウタンのような形をしている。 大和(民宿のおばあちゃんは、本土のことをそう呼んだんだ)行きの船の中。 もちろん島にはホテルなどなく、3件の民宿があるのみ。 時…