「懐かしい知らない場所」
急にザバダックが聞きたくなって、CDを引っ張り出してきた。たまたま手に取ったのが、「桜」。
のれん分け直前のアルバムの一つ。
その中に、「Psi-trailing」という曲がある。
作詞、新居昭乃。
作曲、吉良知彦。
ボーカル、上野洋子。
「Psi-trailing」は、「渡り鳥」の意らしい。
以下、ニコニコ動画から。MADしかなかったので、「ひぐらしのなく頃に」とのMADを貼っとく。
上野洋子の澄みきった声が響く。抑えきれない思いを、ほどよく抑制したいい歌だ。
ザバダックらしい、美しい世界が広がる歌詞。
小さく透明な球に、幻想的な世界がシュンとおしこめられている。
人はそういう世界を夢想することによって、救われるんだ。
「Psi-trailing」に、こんなフレーズがあった。
出かけるの(rara)
tra ra Psi-trailing
懐かしい知らない場所
鳥たちの(rara)
tra ra Psi-trailing
奇跡の旅へ
「懐かしい知らない場所」。
いい言葉だなあ。
懐かしくて、かつ知らない場所。懐かしいと知らないが矛盾している。懐かしいんだったら、知ってるはずだから。
でもこの気持、よーくわかるんだよなあ。
デジャヴっていうんだっけ。
旅行なんかするとよくある。
「あっ、ここなんか懐かしい。知ってるような気がする。初めてきたはずなのに」
でも「懐かしい知らない場所」っていう感覚は、旅行だけで感じるものじゃない。
デジャヴの概念にとどまらないこの感覚。
自然に遊んだとき。
林道をバイクで走るとき。
捨てられたような山道をひらきながら登るとき。
海を潜るとき。
砂浜を歩くとき。
岩礁を上り下りするとき。
廃墟と化した観光地を探索するとき。
川に浸りながら川の源流を探すとき。
滝を聞くとき。
クスの香をかいだとき。
キンモクセイの香をかいだとき。
海の香をかいだとき。
警戒している馬が、それでも自分を触らしてくれたとき。
自転車で、海辺に設けられたサイクリングロードを走るとき。
夏の高くて広い空を見たとき。
知らないはずなのに、すっごく懐かしい感じ。目をつぶって思わず深呼吸してしまうような。
本能が、「心地いい」といってる?
自然と遊んだときだけじゃない。
大事な友達と話すときだって僕にはそうだ。「懐かしい知らない場所」だっていう感覚を喚起するんだ。
「懐かしい知らない場所」に身をひたそう。
それは一人じゃないとできないときもあるだろうし、大事な人とじゃないとできないときもあるだろう。
「懐かしい知らない場所」に身をひたそう。そう、できるだけ愛しく。
《20081105の記事》