少女ノイズ

少女ノイズ
三雲岳斗 2007 光文社


【アマゾンより】
ミステリアスなヘッドフォン少女の美しく冷徹な論理
欠落した記憶を抱えた青年と心を閉ざした孤独な少女。彼らが出会った場所は無数の学生たちがすれ違う巨大な進学塾。夕陽に染まるビルの屋上から二人が見つめる恐ろしくも哀しい事件の真実とは――。
気鋭の作家が送る青春ミステリーの傑作!


【雑記】
完全にジャケ借り。
表紙の女の子が可愛かっただけじゃないんだ。
黒髪ロン毛の女の子がヘッドホンをつけているというその組み合わせに惹かれたんだ。


小説としての完成度は微妙。


語り手、高須賀の一人称なんだけど、語り手が体験したことを、物語上、都合の良いときに明らかにする例が多い。「実はあの時、高校に行ったのはかくかくしかじかというわけだったんだ」みたいな。


そういうのが多いと読み手は、小説世界から阻害された感を受ける。一人称ということは基本的に、読み手は語り手(高須賀)と一緒に小説世界を見ているわけだ。そのはずなのに、語り手と読み手の情報や感情や思考は完全に隔絶されている。特に、語り手の体験を後から開示するのはいかがなものか。読み手は常に、物語上、都合の良い情報しか与えられない。語り手の体験すら都合が良いときになってやっと明らかにされる。最も寄り添わされるはずの語り手に突き放された読み手は、小説世界とどのような距離をとっていいのか最後までとまどい、小説世界にいまいち入り込むことができないだろう。


ライトな推理小説といえるんだけれど、謎かけから答えの開示までがすごく短い。また、読み手が推理するための十分な情報が与えられるわけでもない。それに、論理の飛躍が多すぎる。
あくまで、高須賀と斎宮のへんちくりんな関係を楽しむ小説なのだろう。


《20080808の記事》