KYT(鹿児島の放送局)の温暖化防止をうったえる欺瞞にみちみちた番組に写っていた南太平洋の海と島はそれでもとても美しくて、僕は思わずモニターを凝視した
見とれた僕は 肢体の震えを止めるため 思わず海面に顔を出し ハァハァとせわしく呼吸をしている,
夜空に浮かんでいるたくさんの星々はただくりかえし僕の上を回るだけ,
私ははっきり覚えている,
海辺には白くきらめく砂浜が広がっていて さらにその先には音をたてながら青くきらめくただ美しい海があった,
砂浜と陸地の境目ともいうべき場所には アダンの木ののどかな暗陰があって そこには私のおじいちゃんおばあちゃんの石でできた小さなお墓があったっけ,
そのころ島は無垢な希望と生き物に満ちていた と私は思う,
夜空に浮かんでいるたくさん星々はただくりかえし私の上を回るだけ,
子供たちは幸か不幸かこの島の本当の姿を知らない,
今はもう波にあらわれ 斜めになったアダンの木の根本にわずかばかりの基石がかろうじて残っているだけだ,
潮の香をはなち青くきらめくただ美しい海は すぐ私の目の前に迫ってきている,
島は虚無と退廃でいっぱいだ と私は思う,
僕は知っている,
その日から32年と13日後,
島は静かに揺れながら青くきらめくただ美しい海に ぶくぶくと泡立てながら没したことを,
水中に沈んだその島はだからこそ このうえなくきれいで圧倒されるほどただただ官能的だったんだ,
《20080501の記事》