オデッセウスの鎖(適応プログラムとしての感情)

オデッセウスの鎖(適応プログラムとしての感情)
R・H・フランク著 山岸俊男監訳
1995 サイエンス社


【趣旨】
 自己利益追求モデル(人は自己利益を追求する行動をとるというモデル)は人の行動を予測する上で、ある一定の成果を上げてきた。しかし、それは、人は時に命をかけて見知らぬ人を救助したりすることもあるという利他性をもつ点をうまく説明することができない。コミットメントモデルとは、この自己利益追求モデルを発展的に解消するモデルである。


 人は物質的誘因によってすぐ行動すると、かえって最終的には物質的利益が得られなくなる。例えば、少しでも利益のある契約にはほいほい同意する男がいたとしよう。少しのうまみでもさっさと契約をすれば、その時は確かに利益を得られるだろう。しかし、それでは次の機会、次の次の機会、足元を見られごくわずかのうまみしか得られない契約を結ばざるを得なくなってくる。ここでは結局、最初の時点で自己と相手の利益がフィフティフィフティでなければ契約を結ばない公正な男だと思わせておいた方が後々有利なのである。


 このような公正さや怒り、道徳感情は、人をコミットメントする(特定の行動に縛り付ける)ものとして発達してきたのだ。このような感情を適切に抱くことのできる人間が生存や子孫を残すことに有利だったといえる。


人の行動を予測する上で、人の感情とその感情の根拠を考慮したコミットメントモデルは有用だろう。


【メモ】
※マッチングの法則
→人にとってもその他の動物にとっても、目の前にあるコストや利益は極めて大きくなりやすい


《20071209の記事》