仕掛け、壊し、奪い去るアメリカの論理(マネーの時代を生きる君たちへ)(原田武夫の東大講義録)

仕掛け、壊し、奪い去るアメリカの論理(マネーの時代を生きる君たちへ)(原田武夫の東大講義録)
原田武夫 2007 ブックマン社


【主な(私の琴線に触れた)主張】
アメリカは自国の富を増加させるために動いている(そのためには戦争もするし、不正義な陰謀も実施する)。


アメリカは日本の富を奪おうとさまざまな仕掛けをし、攻勢をかけている(ex郵政民営化規制緩和三角合併新自由主義グローバリズム)。


アメリカが次に日本でねらっているのは 医療 と 教育 の分野。


□現在、巨額の金を簡単に動かすことで巨額の利益を出せる金融資本主義に移行。私たちはそれを学ばなければならない。


アメリカには大統領、政府高官、大企業社長、有名大学教授、芸能人を裏で操る、(英国の植民地として始まった米国を最初から作り上げてきた人たちの末裔である)複数のファミリーがいる。そのファミリーに情報は集中し、アメリカはそのファミリーの利益にかなうよう動く。そのファミリーを奥の院と呼びたい。


アメリカは国家的規模で奥の院に向けて非公開情報を集めている。


□人的ネットワークを構築し、お金で買えないが重要度の高い非公開情報を入手していくことが必要。


外資投資ファンドの4つのステップ
(1)狙いをつけた企業の株価が下がるように工作する。
(2)首尾良く株価が下がったところで大量にその株式を取得し、企業買収(MアンドA)を行う。
(3)買収した企業の徹底した経営合理化を行い、収益を改善し、企業価値を向上させる。
(4)これに伴って株価が上がってきたところで、株式を高値で日本人たちに売り渡し、売り抜けることで巨額の利益を得る。


□人脈作りにおいて念頭に置いておくべき原理(ネットワーク分析)
○ネットワークは数でなく質である
→そこに流れている情報の質が重要。


○密度の高いネットワークは、情報収集機能が弱い
→似たような分野に密集したネットワークを持っても集まるのは同じような情報ばかり。ネットワークは遠くの点と点を結ぶように。


○他者の関係を仲介できる位置を占めよ
→最初は仲介していても自分抜きで情報を行き来させるようになると、そのネットワークから追い出されてしまう。


○代替のない位置を占めよ
→常にオンリーワンとしての質の高い情報を得、提供できる立場を維持する必要がある。


○少しの努力で、世界は急激に広がる
→身の回りの人たちから、さらにその身の回りの人たちへ。


○ブリッジは壊れやすく、1年で9割が消滅する
→互いに異なる情報をつなぐ人物のことをブリッジと呼ぶ。情報収集、情報発信に好都合。しかし、壊れやすいので、常に新たなブリッジを作る努力を続けなければならない立場。


○情報交換のためのネットワークは互恵関係であり、相手は多いほどよく、裏切りの抑止力となる


○自然にゆだねず、常に微調整を繰り返す


【私の疑義】
アメリカを支配しているという奥の院に対する具体的著述がないため信憑性に疑いを持たざるを得ない。主として金持ちのためにアメリカが動いているというのは理解できる。しかし、アメリカを強固に支配している奥の院の存在を主張したいのなら、何らかの具体的事実が必要。


【雑感】
現在、日本経済がアメリカの圧力のもと、新自由主義に基づく金融資本主義をとっているというのは重要なことだろう。良きにしろ悪しきにしろ。巨額の外資の急激な流出は多くの後進国の経済を破壊しており、日本もそれに注視する必要がある。


なお、奥の院という言葉が比喩として本書に登場するが、聖地をうろちょろするのが好きな私にはたまらないような情報だったので、奥の院の説明を本書からメモっておく。


奥の院とは、日本の山寺で人々が普通にお参りする本院より更に奥深く、時に険しい更なる山の上にあったりする施設のことを指す。大事な本尊が奥の院にあったり、霊験あらたかなのはむしろ奥の院であったりするのだが、あまりに道のりが厳しいのでほとんどの人たちはその存在にすら気付かないものである。」


《20071022の記事》