黒部の山賊 アルプスの怪

黒部の山賊 アルプスの怪
伊藤正一 初版1964 山と渓流社

内容、出版者ウェブサイトより

北アルプスの最奥部・黒部原流域のフロンティアとして、長く山小屋(三俣山荘、雲ノ平山荘、水晶小屋、湯俣山荘)の経営に携わってきた伊藤正一と、遠山富士弥、遠山林平、鬼窪善一郎、倉繁勝太郎ら「山賊」と称された仲間たちによる、北アルプス登山黎明期、驚天動地の昔話。
また、埋蔵金伝説、山のバケモノ、山岳遭難、山小屋暮らしのあれこれなど、幅の広い「山の話題」が盛り込まれていて、読む者をして、まるで黒部の奥地にいるような気持ちにさせてくれる山岳名著の一書です。

感想

極寒のなか強風がふきつけ、予想外の鉄砲水が襲う黒部の地は、人を寄せつけない日本最奥の地である。そうして荒れ狂う自然環境であるのと同時に、「色あざやかな高山植物が咲き乱れ、熊、カモシカ、兎、雷鳥などが遊び、黒部の清流には岩魚が群れている、天国のようなところである」p12、という。

こうした魅惑の地の、終戦直後から昭和30年後半までの時期を舞台とし、著者や猟師が経験したこと、黒部にまつわるエピソードを整理している。そこは古典文学に登場してきたさまざまなモノノケたちの残り香の漂う土地であった。

1日に草鞋を2,3足もはきつぶした話と、体をはるかにこえる長さ木材をたくさん背負って登っていく歩荷(ぼっか)の写真が印象的だった。