人体 失敗の進化史

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人体 失敗の進化史
遠藤秀紀 2006 光文社

内容、カバー折口より

「私たちヒトとは、地球の生き物として、一体何をしでかした存在なのか」
二足歩行という、ある意味とんでもない移動様式を生み出した私たちヒトは、そのために身体全体にわたって、「設計図」をたくさん描き換えなくてはならなかった。そうして得た最大の“目玉”は、巨大で飛び切り優秀な脳だったといえるだろう。
ホモ・サピエンスの短い歴史に残されたのは、何度も消しゴムと修正液で描き換えられた、ぼろぼろになった設計図の山だ。その描き換えられた設計図の未来にはどういう運命が待っているのだろうか。引き続き、描き換えに描き換えを続けながら、私たちは進化を続けていくのだろうか。

感想

・「「退化」の進化学 ヒトにのこる進化の足跡」、http://d.hatena.ne.jp/skycommu/20141227/1419637312を読んだとき、ネット上で本書との関連が指摘されていたので読んでみた。確かに問題意識は近しい本だったが、どちらもそれぞれ勉強になるものである。本書のほうはより、部分部分、そして人類の進化に焦点をあてている。

・著者は解剖学者として、地道な研究の大切さをたびたび説いている。その熱意が伝わってくる本。

・タイトルに「失敗」とあるが、本書の論点からは的をはずしている。しいていえば、祖先の機構を流用しているので限界がある場合もある、といったところか。しかしいくら限界があるといえどもそれを上まわるメリットがあるわけで、それを「失敗」とラベリングするのはさすがにキャッチー過ぎるだろう。

メモ

・最近の研究では、哺乳類は爬虫類の一群から生じたというよりも、両生類から直接生じたとされている。

・動物の諸機構は、白紙から設計されるのではなく、進化の過程でその祖先の機構を流用して書きかえることで新たな機構として生じることができる。当初の意図とは異なる役割を果たすことも珍しくない。また祖先の設計に縛られ、限界や問題点を含むこともある。

・リン酸とカルシウムの貯蔵庫 → 骨(体を支えたり、運動の起点となったり、身体を保護したり)

アゴの骨の一部 → 耳において音を伝達する骨 (哺乳類は頭部が地面から離れているため、地面から振動を関知することができない。そのかわりに耳小骨が発達したか)

・エラを支える骨 → アゴの骨

・ユーステノプテロンのもつ骨付きで肉厚のひれ(流水の中で細かい運動や姿勢制御ができる) → 陸上に進出したイクチオステガの四肢

・汗腺 → 乳腺

・うきぶくろ → 肺

・初期の脊椎動物はきれいな左右対称(ナメクジウオやサメなど)。しかし高等になればなるほど、設計変更をくり返してきたため、左右対称でなくなってくる(各種内臓など)

・鳥類は体を軽くするため、骨がスカスカであるのみならず、肋骨の少し下あたりから尻までにあたる骨が一個の固まりとして結合している(腰仙骨)。その分軽いが、背骨の柔軟性が問われる背伸びや前屈はまったくできない。

・人類は・・・
 二歩歩行で、体重を受け止められるよう足がアーチ状に発達。またカカトも発達。
 内臓を支えるために骨盤が発達。
 足を背中側に曲げられるようおしりの骨と筋肉が発達。そのためおしりが大きい。
 二足方向で体の向きが90度かわったため、主な血液の流れが垂直に。頭と足で血圧の振り幅が大きくなってしまった。重力に逆らう上部に位置する脳はつねに貧血気味。