勝ち続ける意志力 世界一プロ・ゲーマーの「仕事術」

勝ち続ける意志力 世界一プロ・ゲーマーの「仕事術」
梅原大吾 2012 小学館

内容、カバー折口より

17歳にして世界一になった。2010年8月、「最も長く賞金を稼いでいるプロ・ゲーマー」としてギネス・ワールドレコードに認定された。職業、プロ格闘ゲーマー。これから僕は、「世界一になって」、そして「世界一であり続けることによってしか見えなかったこと」について話をしたいと思う。それは「勝つために必要なことは何か?」「なぜ多くの人は勝ち続けることができないのか?」という話だ。いわば「世界一になり、世界一であり続けるための仕事術」とも言えるかと思う。その技術は、ゲームの世界ではもちろんのこと、それ以外の世界でも必ずや、前進のためのお役に立てるだろう。

感想

非常に熱い本。「チャンピオンになることより、勝ち続けること、成長し続けることの方が遙かに難しいし、価値がある」p241とし、「勝つこと」ではなく「勝ち続けること」という、より困難なことに主眼をおいている。そのためにはどうすればよいか? どのような考え方をすればよいか? どのようなスタンスでことに挑めばよいか?
それらに対する筆者の考えがあつあつと書かれている。

もっともそれらは深く掘り下げられている、とはいえないだろう。論拠を丁寧に提示したり、問題を深く展開していないからだ。本書は「勝ち続ける」ことに対して哲学的に考察を深められているわけではない。著者の熱い思いがふつふつと述べられている。そしてその記述はストレートで読者の胸に突きささる。それも氏の長大な努力に裏打ちされた自信に満ち満ちた言葉だからだ。その熱さに読んだ人は思わずあてられることだろう。考えや行動が変わる。つまりは、よい本なのである。

「成長し続ける」のために困難な道を歩み続ける人は多くはあるまい。それでも各々の活動している地点で、いっときでもいいから氏のようなスタンスで仕事をしてみたら・・・。きっと今までとは違うものがみえてくるのだろうな、と思う。「大事なのは変わり続けること」p99、胸の奥にひそめられたら。

メモ

・「僕にとって何が自信につながったかと言えば、それはゲームの上手さや強さではなく、苦手なものを克服しようとしたり、あえて厳しい道を選んだりする自分自身の取り組み方、高みを目指す姿勢を貫けたという事実があったから」p51

・「勝ち続けるためには、勝って天狗にならず、負けてなお卑屈にならないという絶妙な精神状態を保つことで、バランスを崩さずに真摯にゲームと向き合い続ける必要がある。」p57

・「どれだけ勝とうが負けようが、結局は誰もがひとりの人間に過ぎず、結果はそのときだけのものだ。勝敗には必ず原因があり、結果は原因に対する反応でしかない。刹那的な結果に左右されず、勝てるようになるための努力を怠っていいはずはない。そう考えることができれば、バランスが崩れるようなことはない。」p58

・「自分を高めるということは、何かを編み出したり、経験を積んだりすることで、自分の引き出しをいっぱいにすることではない。より新しく、かつ良いものを生み出し続ける姿勢こそが、遙かに大事なこと」p76

・「変化なくして成長なし」 「変化したことで失敗したり、後ろに下がったりしたときは、もう一度変化すればいい。失敗に気づいて変化すれば、以前の自分よりも必ず高い位置に行ける。」p83 「成長というのは、とにもかくにも同じ場所にいないことで促進される。」p84

・「人は、過去の栄光にすがると弱くなる。僕は大会で優勝した翌日ほどゲームセンターに行くようにしている。(中略)すると、勝ったり負けたりする。そして、自分に言い聞かせる。「ほら、チャンピオンと言ったって、勝ったり負けたりなんだから・・・・・・」チャンピオンが常に勝てるとは限らない。チャンピオンになることより、勝ち続けること、成長し続けることの方が遙かに難しいし、価値がある。そのことを思い知ると慢心が消え、次の日からまたチャレンジャーの気持ちで戦うことができる。」p240

・「僕にとって生きることとは、チャレンジし続けること、成長し続けることだ。」p246

・(気になることは必ずメモして、のちのち検討しよう。)p86

・「変化=進化を続けるためには、あえて苦手なことに挑戦してみるのもいい。」p90

・「勝ちを続けるためには、ひとつの問題に対して深く考えなければならない。」p94

・「失敗を恐れずに行動しているかどうかは、自分がいま止まっているかどうか、前に進めているかどうかのいい指標にすらなると思う。」p103