帝国の娘

帝国の娘
須賀しのぶ 1999 集英社

内容、カバー折口より

(前編)
カリエ、14歳。彼女は、ルトヴィア帝国の国境にほど近い小さな山村の猟師の家に育った。ある冬の日、カリエは、いつもは女の身で狩りに出ることを快く思っていない父親に、珍しく「狩りに行け」と命じられた。吹雪の森の中、獲物を求め歩いていたカリエの前に突然現れたエディアルドと名乗る貴族風の男。「おまえを迎えに来た」―――気を失わされたカリエが攫われていった場所というのは…!?

(後編)
重い病に臥せっている皇子アルゼウスの影武者にさせられたカリエ。彼女は帝国の皇位継承者としての教育を受けるべく、カデーレ宮殿に入ることになった。
彼女を待っていたのは選定のライバルとなる、ドミトリアス、イレシオン、ミューカレウスの三人皇子。特に歳の近いミューカレウスの言動は挑発的で、何かにつけてカリエにからみ、ついには決闘をする羽目になってしまうのだが…。

感想

○シリーズものの序章にあたる。

○読みやすい文体。先の展開も気になり、すらすら読んだ。

○物語世界内の神話をよく効かせていて、重厚な雰囲気をもつ世界観を構築できている。

○主要登場人物であるエディアルドは、その主人であるアルゼウスに心酔している。しかしその理由がよくわからず、物語のキーとなっている彼の行動に感情移入できなかった。

○登場人物がそれぞれ生きているというよりも、物語の構成上、あたえられた役割を果たしているような感じを受けた。容姿の秀でたものばかりだし、性格がスパッと簡単に単純に定義されているのだ。一番の不満はここ。人間味がない。