東アジアの軍事情勢はこれからどうなるのか

東アジアの軍事情勢はこれからどうなるのか
能勢伸之 2015 PHP研究所

内容、カバー折口より

いまや世界でも有数の不安定地域に数えられる東アジアだが、そもそも中朝がどんな兵器を有しているか、日米がいかなる防衛体制を敷いているか、即答できる人は多くないだろう。中朝の凄まじい軍事力、進化し続ける日米の防衛力、韓国や台湾の思惑……本書でまず描かれるのは、知られざる極東の最新軍事情勢だ。そして、その趨勢に決定的な影響を与えるのが、同盟国などのあいだで軍事情報をやりとりする「データリンク」という技術。そうした「国籍を超えた防衛上の仕組み」は集団的自衛権とどう関係するのか。日本の安全保障の未来を考えるうえで、不可欠な論点を軍事のプロが語る。

メモ

本書は具体的に述べているが、その内容をざっくりいうとこんな感じになる。

・まず東アジアの軍事情勢の変化、軍事技術の発達により、日本の安全保障上の懸念が増している、という。
ソ連の軍事技術が冷戦終結により中国や北朝鮮に流出し、かの国の軍事力を高めたこと。弾道ミサイル巡航ミサイル、ともに高性能化(北朝鮮のミサイルの攻撃距離は長くなっている)。核兵器を開発してしまった北朝鮮。INF条約に縛られず、中距離核兵器を保持する中国。

・それに対するアメリカを中心とする西側諸国の対策がイージス艦の改修と、イージス艦やその他のレーダー、攻撃システムを高度に結んだ「データリンク」だという。このデータリンクは単なる情報のやりとりにとどまらず、ほぼリアルタイムでデータを合成し共有。それに基づき迎撃ミサイルを発射するもの。
さらにいうとこのデータリンクはアメリカ一国で行うのではなく複数の国で行われることをめざしている。「国籍を超える防衛上の仕組み」となっているのである。また技術面だけでなくアメリカ軍とその同盟国軍の結びつきは進んでいる。たとえば、米太平洋陸軍の副司令官は現役の豪陸軍少尉。また、第七艦隊司令部の作戦参謀の一人は英海軍ステイリー中佐。

・日本で議論されている集団的自衛権の議論は、現在進展しているこの「国籍を超える防衛上の仕組み」という軍事技術が背景にある。

感想

まさに時勢にあった本。技術的にも実質的にもアメリカ軍を中心に、アメリカの同盟国軍が密接につながりつつある。このようななか日本が自国防衛のためにその恩恵を共有するには、これまである条件下でないと行使できないと議論されてきた集団的自衛権がネックになるようだ。

そうした背景がよく理解できた。

自国のみで防衛することが極めて難しい以上、この時代の流れにそうのは当然だと思う。そもそも国連憲章でも認められている集団的自衛権を日本は自由に行使できない。自らその手をきつく縛っているのは本当に不思議な話ではないか。いつでも集団的自衛権を行使すべきとはさらさら思わないが、その状況に応じて集団的自衛権を行使できるようにすべきだし、カードの1つとして確保すべきだ。
今回の集団的自衛権の議論は、敗戦後の日本を不当に縛ってきた荒縄の1つだと思う。よく言われるのが大日本帝国憲法下より日本国憲法下のほうが長い、ということ。敗戦後70年。サンフランシスコ講和条約からも63年たっている。人口減少や他国の発展により日本が相対的に国力を落としていくなか、これまでのように他国におんぶにだっこではいかなくなると思う。