天皇陵の解明 閉ざされた「陵墓」古墳

天皇陵の解明 閉ざされた「陵墓」古墳
今井 堯 2009 新泉社

内容(「BOOK」データベースより)

日本の古代国家形成解明の鍵をにぎる巨大古墳。その多くは天皇陵に指定され、研究者といえども立ち入ることはできない。この「陵墓」古墳をさまざまな角度から追究、天皇陵や陵墓参考地の実像を明らかにする。

メモ

○(同時期で最大の古墳は、つねに前方後円墳。)

○(明治政府がいろいろな古墳を、天皇家の○○の墓であると決定した。しかしその決定はいい加減で、後の考古学的な研究でその指定が間違っていることが明らかにされた古墳もある。

明治政府の比定は事実に基づいて行うという姿勢ではなく、比定によって天皇の、万世一系の皇統を具現化させるのが目的だった。そのため実在性や科学的検討は二義的であり、とりあえず歴代天皇陵のすべてを比定することが優先された。
このことは陵墓の比定が神武天皇の曾祖父、祖父、父とされる神話上の三代から始められたことに端的に示されている。)

○(宮内庁による陪塚の指定は、科学的根拠をもたないものを多く含んでいるし、真に陪塚とすべきものが除外されているケースも多い。)

感想

○陵墓は国民主権の現在であっては、国民の財産として開かれた存在であるべき、というのが本書の姿勢。私も同感。

○陵墓に関する諸問題--比定のいい加減さ、古墳保全のずさんさ、陵墓の限定公開に至る交渉--が整理されている。
本書によると、陵墓を管理している宮内庁の対応も年々難化しているようで、妙な呪縛を乗り越えて、日本の歴史を明らかにしていく方針に転換することを強く望みたい。