山の音

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山の音
川端康成 初版S29 新潮社

内容、背表紙より

深夜ふと響いてくる山の音を死の予告と恐れながら、信吾の胸には昔あこがれた人の美しいイメージが消えない。息子の嫁の可憐な姿に若々しい恋心をゆさぶられるという老人のくすんだ心境を地模様として、老妻、息子、嫁、出戻りの娘たちの心理的葛藤を影に、日本の家の名状しがたい悲しさが、感情の微細なひだに至るまで巧みに描き出されている。戦後文学の最高峰に位する名作である。

感想

○有名な作品ゆえ、その主題は語り尽くされている。それと重複するのだろうが、あえて自分の言葉でまとめるとするならば、本小説にむんむんと充満しているのは痛ましいほどの「悲哀」だ。
自分にひたひたと忍び寄ってくる老い。うまくいかない家庭。その微妙な空気。古い恋心をひきづる。老人と呼ばれるようになる歳になってもまだ感じる、なにか満たされない「生」。
そういう種々の悲哀が、人間社会に根ざした美しい四季のなか、繰り返し描かれている。

○浮気を止めない夫との子供を堕ろした菊子や、逆にあの時代にあって夫のいない子を女手一つで生み育てていこうと決心する絹子といった女性のある種の強さが描かれていた。そして逆に全体的に男がふがいないw

○視点人物は60を超える信吾という人物であるが、なんともエロティックな目線で息子の嫁を見ていて、いやあエロかったエロかった。
「 菊子の遅く長めな首がきれいなのは、信吾もよく知っていたが、ほどよく離れて寝そべった目の角度がひとしお美しく見せるのだろうか。
 秋の光線がいいのかもしれない。
 そのあごから組には、まだ菊子の娘らしさが匂っている。
 しかし、やわらかくふくらみかかって、その線の娘らしさは、今や消えようとしている。」

上記引用した部分はまだキレイな部分である。
それ以外に、息子夫婦の夜の営みに注目したり、娘のおっぱいに着目したり、子供の美醜をどうのこうのいったり、夢で女を抱きかけたり、仮面にエロティックな幻想を投影し接吻しそうになるなど、エロス満載である。これぞ日本が諸外国に誇れるHENTAI?

○女性の視点からの論考を読んでみたいと思った。

○信吾は、孫のこともなんだか疎ましく思っているようで、今まで僕は、人間は無条件で自分の孫を溺愛すると思っていたので、けっこう衝撃だった。
一般的にはどうなんでしょうね?
さすがに世間の空気的に、小さい孫がめんどくさいなんて言えないか。