7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想

7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想
城 繁幸 2010 PHP研究所

内容(カヴァー折口より)

40歳になっても係長止まりのバブル世代。二人目が産めない女性一般職。正社員になれない団塊ジュニア。ああ、なんでこの国はこんなに生きにくいんだろう…。閉塞感漂う日本経済、終身雇用を望む新人の割合が過去最高を記録した。しかし「終身雇用=安定」は真っ赤なウソ。35歳で昇給を止める動きがすでに加速、生涯賃金は十数年前とくらべ三割減。まさに飼い殺しなのだ。二〇一X年、働くことに希望がもてる会社にするために、私たちがいまこそ心しておくべきこととは?雇用問題のスペシャリストが示す最終解答。

感想

少子高齢化のなか、日本の硬直した労働市場の問題点を述べた本。簡単にいうと、解雇規制を緩和し、会社の業績や労働者の能力に応じて人がより自由に出入りできる流動化した労働市場にしていくべきだ、と主張している。

その他、主要な主張を列記すると……
(年功序列という年齢を基準に給料が上がっていくため、学部新卒以外の中途採用などは割高になってしまう。こうなっている理由の一つは、会社に年齢以外で人を評価する力がないから。結果、高度な学問に取り組んできた人や多様なキャリアを積んできた人が認められない。

労働組合も正社員の既得権益を守るための行動しかしない。
終身雇用を維持するため非正規労働者や女性に、景気の上がり下がりにおけ雇用の調整弁としての役割が押しつけられている。
日本の教育システムは虚構。学問ごっこに興じつつ、本当は偏差値証明書が欲しいだけ。p69)

○章末にその章のまとめがあって、勉強しやすい。復習しやすい。

○本書を読んだのは2012年の12月であるが、本書で述べられていることはかなり「常識」として広まっている。
特に前著『若者はなぜ3年で辞めるのか?』の名前をあげながら、硬直した労働市場の問題点を指摘した友人やブロガーが、僕の周りに複数いた。世に問題を喚起し広めたという点で著者の功績は大きい、と思う。

ただ、アメリカのように解雇規制を緩和し、労働者がより自由に転職を繰り返す社会の方がいいのだろうか? その社会で暮らす人々はより幸福になるのだろうか? 社会はよりうまくまわっていくのだろうか? 僕にはよくわからない。
もちろん、著者の言うように、「すべてにおいて若者にツケをまわ」p107すのは間違っている。
本書を読んで一つの勉強をした、というのに留めておきたい。

○なお、どっかの本かブログでこんな主張を読んだことを思い出した。
労働市場がより柔軟になると、選挙に落ちても転職しやすいので、多くの人が政治に挑戦しやすくなる。その結果、政治家の質も上がっていく。》
僕は妥当な意見だと思ったし、労働市場を柔軟にするメリットの大きなものの一つだと思ったのだが、どうだろうか。