ニュースの裏を読む技術 「もっともらしいこと」ほど疑いなさい

ニュースの裏を読む技術 「もっともらしいこと」ほど疑いなさい
深澤 真紀 2012 PHP

内容(裏表紙より)

生活保護の報道を見ても、日本人は親を大切にしなくなった」「草食男子の出現や共働きのせいで、少子化が進んでいる」「最近の若者は、ネットやらスマホやらで人間関係が希薄」…もっともらしく語られることを鵜呑みにしていては、思考が停止してしまう。「草食男子」の名付け親が、誰でもアクセスできるデータを引きながら、常識のように扱われるニュースの裏側を解説。情報社会に欠かせない、ニュースの読み方・捉え方を指南する。

感想

○タイトルに「ニュースの裏を読む技術」と銘打っているが、「技術」についてはほとんど書かれていない。
本書の内容は、もっともらしく流布している、あるいはニュースで取り上げられた事柄に、著者がつっこみを入れ、世俗の論調とは逆の主張をしようというもの。
もっともらしい主張を鵜呑みにせず、疑い、検討しなおし、自分なりに考えていこうというわけである。

筆者が本書で述べている常識とは逆の主張それ自体はいいのだが、書名に「技術」と銘打つ以上、ニュースの裏を読む技術を本書の中心に据え、その具体的成果を従として整理すべきだろう。
本書はそうなっていない。たぶん著者自身、技術も何もないのだろう。ゆえに著者のニュースに対するつっこみがざっくばらんに適当に並んでいる、ということになる。

○パラパラ読むぶんには面白いが、内容はバラバラでまとまりがなく腰を据えて読むような本ではない。
また著者の意見自体、ネット上ではよく見かけるものが多かった。それだけ意外性はなかったのである。

○言葉や論の運びで雑なところが散見。

○と、若干の不満はあるものの、おもしろいデータが紹介されている面もあり、参考になった。

○「博報堂生活総合研究所」の興味深いデータが紹介されていた。2008年のデータであるが、「夫婦の時間を充実させたい」が20年前と比べ、
男 30.6→39.3
女 35.2→26.2 と変化。

男女の逆転もさることながら、男性が10%近く増加したのに比べ、女性は10%近く低下。

調査方法の内実について知らないのであまりつっこんでコメントしづらいが、さっと見、非常に大きくかつ興味深い変化だと思う。
女性が低下したのは、仕事をする者、あるいは娯楽が増えたため、夫に関心を払う割合が減ったためか。
男性が上昇したのはよくわからん。なんででしょうね? 経済の悪化により会社からもたらされる賃金や社会的地位が減らされ、そのぶん関心が妻というか家庭に向いた?

○「第八回世界青年意識調査」によると、日本の18〜24歳に学校に行く意義について聞いたところ、他国に比べ、「友情をはぐくむ」が高く、「知識を身につける」が低かった。
他国のほうが「知識を身につける」ため学校に行く、と考えているようで、これは意外だった。特に高等学校レベルの教育は、僕自身、外国の方がルーズな印象を持っていたため。

日本において「友情をはぐくむ」ため学校に行く、と考える生徒が外国に比べ多いのは、日本特有の拘束的な学級制度が影響か? また、中高で学んだことが役立っていないという意識もあるのだろうか?

なおこの調査は、その対象国が先進国とはいえたった5カ国ぽっちしかないので割り引いて考える必要はある。

メモ

(私たちは現代を、ひどい時代だと言いたくなる。なぜなら、「自分が生きている“今”という時代を、たとえネガティブであっても、“特別”だと思いたい」というドラマチックな欲望があるから。)p17
(また、現代をネガティブに捉えることによって、「自分は真剣に今の世の中を憂えている」と思うことができる。)p20