うた恋い。和歌撰 恋いのうた。

うた恋い。和歌撰 恋いのうた。
渡部 泰明 (著), 杉田 圭 (イラスト)

内容、出版社ウェブサイトより

『うた恋い。』で和歌のすばらしさを知った、すべての人に読んでほしい 恋歌の和歌撰!『うた恋い。』の杉田圭と、監修者で東京大学大学院教授・渡部泰明のコラボで贈ります!「恋」をテーマに渡部泰明が恋歌を解説し、杉田圭がうち3本をダイナミックにマンガ化!(描き下ろし漫画は79ページとなります。ほか、描き下ろしイラストも!)解説ページでは『うた恋い。』シリーズからの漫画抜粋もふんだんに使用し、和歌の世界をより楽しく知ることできます。『うた恋い。』からはじまる、和歌がもっと身近になる超訳&解説満載のファン必携の一冊!

感想

本著をはじめとした「うた恋い」シリーズは、マンガという表現形式を使い、古典和歌にまつわる物語を描いたもの。イラストで視覚的に表現することにより、日本の古典世界をイメージするのに役立ち、「古文」の導入教材として高等学校などで使えそうなものだ。
イラストの想像以上に効果は大きく、現代に通じるような政治的取引や恋の駆け引きが一見してかいま見えて、古典の世界に親しみを感じられた。
また室内の構造や、女性が公的な空間では男性に顔を見られないようにしている様子も描かれており、古典世界独特の在り様を把握するのにも便利だった。
頭でわかっているだけでパッとその世界を想像できる人もいるかもしれないが、イラストを通すことでより簡単に自然に、古典独特の世界を想像できるようになると思う。少なくとも私はそうだった。

そういう点で、高校生にはぜひおすすめしたい本である。

古文を少しでも読め、その世界をイメージできるようになるには、古文の世界に対する親しみや共感も必要だろう。マンガを使った本書は手っ取り早くそれに役立てるという効能もある。

古典の理解がイラストやマンガでより進むなら今後、このようなマンガをどんどん授業で使っていってもいいのかな、と思った。
生徒にやる気と興味関心、古典世界をイメージする取っかかりをあたえるのに効果的だと思うから。

メモ

(現代なら、ケータイやメールといった情報通信端末を使って恋人と「今この時」を共有することができる。
しかし、技術の発達していなかった古代ではそれが難しい。

そんな中、「季節のもの」が相手と同じ時を過ごしていることを認識できるツールだった。
虫の音、花、月・・・。古代の歌人たちは、これら「季節のもの」を和歌に織り込むことによって大切な人と心を重ねていたのである)p64