失敗のメカニズム 忘れ物から巨大事故まで

失敗のメカニズム 忘れ物から巨大事故まで
芳賀 繁 2000 日本出版サービス

内容(「BOOK」データベースより)

1994年、名古屋空港着陸に失敗し大惨事となった中華航空機の墜落事故は、思いがけない操作ミスが原因だった。忘れ物や勘違いなど日常の小さなミスも、交通事故や原発事故など大きな事故の原因となるエラーも、本質的には同じ「失敗」である。ミスをおかしやすい人や組織、環境とはどのようなものなのか。本人の意図に反して自身や周囲に被害を与えてしまう人間の行動(失敗)を「ヒューマンエラー」と位置づけ、多くの事例をあげてそのしくみをわかりやすく解説。対策を考えるためのヒントを提供する。

感想

書いていることは当たり前といえば当たり前のこと。しかし、世の中にはいろいろな失敗があふれていて、それに対しなんと近視眼的な、場当たり的で非合理的な対処が為されていることか。
どんなことにも言えるけれど、口で精神論を唱えるだけでは意味がない。失敗もそうだ。
個人的な原因の場合もあるだろうが、それだけで失敗が起きるわけではない。失敗を誘引するインターフェイス、状況、時間、「チームワークやリーダーシップ、関係者のコミュニケーション、組織の意思決定のあり方、企業や地域や家庭の安全風土」p183などなど。もろもろの原因が重なって失敗は起きる。
失敗を防ぐには、もろもろをシステムと捉え、システムの改善に取り組むほか無いということを、あらためて思った。

人間は失敗するものであるという常識を踏まえたうえで、コストとベネフィットを天秤にかけ、冷静に議論、対策していくために本書は役立つ。

メモ

(なぜヒューマンエラーへの関心が高まったか?
1、機械が壊れなくなり、トラブル全体におけるヒューマンエラーの割合が大きくなった
2、人間がコントロールできるエネルギーが大きくなり、ヒューマンエラーしてしまった際の被害が大きくなった)p3

(「メンバーの立場を理解し、集団内に友好的な雰囲気をつくり出す」リーダーのもとだと、部下の事故率が低かった)p72

(ヒューマンエラー事故の対策は次の三つのレベルでそれぞれ行うべき。
1、エラーの発生率を下げること。
2、エラーが事故・災害につながることを防ぐこと。
3、事故が起きたとき、被害が小さくなるようにすること。)p181

(犯人捜しをしたり、ミスをした人を責めるのではなく、失敗の原因と背景要因を究明し、職場全体で防止対策を話し合い、管理者、経営者はそれに応えて必要な人的、設備的、財政的措置を講じ)p189

(安全と安泰は違う。安泰は、ひたすら今ある事態・状態を変化させずに持続しようとする意味。安全とは、目的を達しつつ、不都合なことを生じさせないこと。)p192