「読む」技術 速読・精読・味読の力をつける

「読む」技術 速読・精読・味読の力をつける
石黒圭 2010 光文社

内容、カバー折口より

言語の学習には、「読む」「書く」「聞く」「話す」という四つの技能がある。その中でも「読む」という行為は、漢字と語彙がわかれば自然に読めると思われているせいか、他の三つの技能よりも軽んじられる傾向にある。しかし、現実の生活を振り返ってみると、「読む」という活動に割く時間は圧倒的に多い。学生であれば教科書や参考書、社会人であれば報告書やレポート、空き時間のメールチェックや新聞・雑誌による情報収集、そして休日の趣味の読書等々。また、人によって「文体」が違うように、読み方にも「読体」という個性があることは、あまり知られていない。
本書は、化石化した自分の読みに揺さぶりをかけ、新たな読みを自分で開発する力をつけるための、八つの戦略(ストラテジー)を紹介。読むという行為をとらえ直し、読み方の引き出しを増やし、実生活での創造的な活動に結びつけることを目指す。

感想

○「書く」や「話す」ではなく、「読む」に焦点を当てた本。「読む」に時間を割くことが多いことから、読みの重要性を説きたいようだ。

○さて本書は、個々人には「読み癖」があると指摘する。p15
これはおもしろい着眼点だなあ、と思った。読むときの癖ねえ。
どんな読み癖の種類があるんだろう? どうやって判定するんだろう? それぞれの癖にはどんな特質があるんだろう?
と、いろいろ興味をひかれたが、この読み癖については、全く触れられてなかった。残念。ここに独自性がありそうなんだけれどなあ。

○その後、多様な読み方を知ることが重要だとし、速読や精読を紹介する。このあたりは目新しさが無く、つまらなかった。
ただ、味読を解説する部は、おもしろい。この部分は読む価値がある。
名詩や名文を紹介しつつ、著者がその表現などを解説しているのだが、文章を細かく解析する妙や楽しさが伝わる読解だった。
特に、カメラをもっている主体を「視座」、カメラが写している対象を「注視点」とし、それらやその移動、カメラワークの分析を紹介する部分が参考になった。宮沢賢治の「やまなし」を素材にこれを紹介しており、「やまなし」という空間の広さや豊かさを感じさせられた。
まさにこういう読みを、「味」読というのだろう。
この部分に限っては本当に勉強になった。