古代史 1冊で、学び直し!

古代史 1冊で、学び直し!
総合文化研究倶楽部 2011 学研

内容(「BOOK」データベースより)

豊富な図解で、歴史の流れが一目瞭然。古代史の要点を、見開きでわかりやすく解説。時代が体感できる、全国99の歴史スポットを紹介。

感想

○日本の古代、ここでは旧石器時代から平安時代のごく初期までの歴史を、図を豊富に含み、分かりやすく整理した本。

○このような本はたくさんあろうが、この本には一ついい特徴がある。

それは関連書籍や史跡の紹介が豊富なこと。
興味ある分野をみつけても、そこから深められなければおもしろくない。優れた関連書籍が道案内として紹介されていれば便利だ。

また歴史を学ぶことには、史跡を訪ね、歴史を血肉化することも必要だ。頭で読んだだけでは歴史を血肉化したとは言い難い(大多数の凡人にはそうである)。
苦労しその地を訪れ、空気を吸い、地形を確認し、歴史がそこに今も残す影響を知るなど、歴史が流れた土地を肌で感じてこそ、歴史は身体化されるのではないだろうか。

○当然、有史以来の歴史はどうしても、残された史書が中心となって解明される。日本も同様である。
ただしこれも当然、史書に書かれていることがすべて正しいわけではない。誇張したり、不都合なことは書かなかったり、あるいは当時の権力者の都合のいいように、歴史の改変すら十分にあり得る。ゆえに後世の人間が歴史を探るとき、当然「史料批判」が必要だ。本書は史料批判をふまえた視点で、信頼感があった。

○非論理的な文章がちょこちょこある。

○本書を読んでいると、日本の古代史って、
「ボーリャク、ボーリャク、ボーリャクの積み重ねなんだな…」、と思った。
ページを繰るたびに、政敵を自死に追いやったり、暗殺したり、攻め殺したり、あるいは不審な病死・事故死が続出する。権力を維持する上で一番のポイントは、政敵をうまく、かつちゅうちょなく抹殺していくことではないか、とすら思えてくる。
歴史とは、政敵の死の積み重ねである。って言いたくなるくらいだw

謀略、つまり権力闘争がうかがえるようなことが記述されているのは正確にいうと、本書のカバー範囲である古墳時代後期から飛鳥時代奈良時代のこと。以降の歴史、例えば時代が跳ぶけれど、江戸時代なんかはそんなに謀略が行われていた印象はない。
とするならば、これだけ謀略が多かった、つまり権力闘争が激しかったということは、古墳時代後期から飛鳥時代奈良時代のある特質を示しているのだろう。
それはどんな特質だろう? 権力委譲が不安定ということだから、政治機構・統治機構が明文化されていないということか。そして権力委譲がシステム化されていないということか。
また、権力者に対する絶対視というか神聖視がなかったということか。

そう考えていくと、謀略三昧であった鎌倉時代初期のことを思い出される。鎌倉時代初期も、源頼朝の死去から執権北条氏に権力が集中するシステムが完成するまで、実に謀略の嵐であった。

○結局、なんだかんだあって、天皇は全国の豪族を束ねる王から、飛鳥時代には有力貴族に翻弄され利用される、ほとんど祭りと政りの象徴のような存在に成り下がっていく。
しかしそのように実質的な権力を持たなくなったからこそ、他国の王族を圧倒するほどの長い長い血筋をつないだのではないだろうか。
力を持った一族は、常にその力を羨まれ、狙われる立場に置かれるのだから。暗愚がトップとなったり、時代が急変すれば、その一族の没落の一途をたどってきたのである。

メモ

(大宝律令の制定で、天皇を中心とした律令国家が誕生。天皇専制ではなく、実質、貴族の合議制)p166