新聞は根拠と価値観を提示した批判するべき。品性を疑うような下劣な非難はいい加減やめたら?

発信箱:お札のサイン=福本容子(論説室)

毎日新聞 2013年02月08日 00時48分

 2期目に入ったアメリカのオバマ大統領から次の財務長官に指名されたジェイコブ・ルーさん。その冗談みたいなサインで一躍有名になった。輪っかが8個ほど横につながっただけ。ペンのインクの出具合をグルグル試した跡にしか見えない。そんな代物を「財務長官署名」として、大切なドル札に印刷するなどとんでもない!の声があがった。

 さて、このお札のサイン。実はアメリカみたいに財務省幹部のものだけという国は異例だ。普通は、紙幣を発行する中央銀行の責任者が署名している。総裁が多いけれど、イギリスは発券局長さんだ。

 1853年までは、一枚一枚手でサインしていたらしい。完全印刷になり、紙幣の発行が楽になると、ある文が記された。「持参者の求めに応じ、この金額を支払うことを約束します」。相当額の金貨との交換を約束したものだけど、金との交換がなくなった今でも文の印刷は続いている。なぜだろう。

 金の裏付けを失った紙切れを信用してもらうには、値打ちを落とさない、必要以上に刷らないことが大事。その誓いを込めて残したのがこの文で、銀行を代表し発券局長さんが署名している、というわけだ。

 日本はハンコの国。1885年に日銀が初のお札を発行して以来、一度もサインが使われたことはないそうだ。こんな国も異例。表に総裁、裏に発券局長の役職の印があるだけで白川さんの名前はない。

 ここは日本もサイン入りにしてみたら? 日銀を大胆に変えると言うアベノミクスだから、やっぱり安倍さんのサインだ。そしたら、さすがにお札を刷りまくって、ばらまいてインフレになることもないはず。自分の名前入りのお札が、値打ちを失うのは安倍さんだって嫌だろうから。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130208k0000m070175000c.html

こんな下劣な文は久しぶりに見た。ネット配信記事だが、紙面にもこんな恥ずかしい低俗な文章を載せるつもりなのだろうか? だとしたら気がふれているとしか思えない。

まず他人を批判したいのならきっちりとした根拠とそう判断する価値観を提示するべきだ。アベノミクスが市場に評価されているのでなおのことである。

他国と同程度のインフレ目標を設定をすることにどんな問題があるのか。揶揄、皮肉を言ってるつもりなのかもしれないが、まずそこを先に説明すべきだろう。それがなされていないから皮肉ではなくバカの書いた中傷にしか見えないのだ。

引用文はとにかく下品で、おもしろくないし単に読んでいて不愉快になるだけである。
引用文のようなゲスな文、チラシの裏にも書かないし、便所の落書きですらこんな不快な中傷文はめったにお目にかかれない。本当に本当に紙面に載せて全国にこの痴態をばらまくつもりじゃないよね? 

記者にバカがいるのは当然だろう。記者だってたくさんいるんだから、そのなかに引用文を書くようなバカがいても別段、不思議ではない。しかしこの引用文がネットで公開されたということは、デスク、あるいはしかるべき権力を持った人が許可したかたちになっていると思う(まさかこの引用文を書いた人が社内権力者じゃないよね?)。つまりこれは、記者個人の資質に発する問題ではなく新聞社自身の問題なのである。

新聞社はもっと当事者意識をもったほうがいい。確かに権力を批判することは大切だ。しかし当事者意識をもってこそ深くその問題の+点・−点やその原因、影響などを分析できるはずだ。小学生でも書けるような(おっと小学生の皆さん、ごめんなさい)愚にもつかない非難はやめて、当事者意識をもって問題を少しは深く分析してみせてほしい。