議論術速成法 新しいトピカ

議論術速成法 新しいトピカ
香西 秀信 2000 筑摩書房

内容、カバー折口より

議論をうまく進めるにはどうしたらよいか? 議論に負けないためにはどうしたらよいか? 本書は、議論に巧みな人たちが意識的にあるいは無意識的に用いている方法を、公然と「盗用」する試みである。古代ギリシア人が始めた「議論のための発想の型(トポス)」に学び、彼らが使ったレトリックをそのままの姿で、あるいは合理的に変形し、いま現在、役に立つものだけを取り出して活用する。ディベート時代の現代において、ビジネスマンはじめ学生や学校の先生にも必携の一冊。

感想

「思考の型」を集め、分析すること。そしてなにより、具体的な例をもって自分でその「思考の型」を使えるようにすること。p83
を主張している。

私は著者の本を五冊以上読んでおり、著者は私の好きな著述家の一人である。本書も、書いていることが前著に似すぎているという点を除けば、たいへん勉強になるものだった。

本書で主張していることは、具体的で真に実践していけるものである。頭をよくするにはどうすればよいか? つまりここでは、いろいろな考え方をするにはどうすればいいか? である。
その一つの方法として、著者は「思考の型」を収集し、具体的な事例にまでおとしこんで使ってみることを主張している。このような学びを丁寧に続けるのは普通の人には難しいだろう。
しかし、(なるほど!)と思った意見の「思考の型」を分析したり、あるいは反論したい主張の「思考の型」を分析し批判の手がかりにすることは、素材の文章にそもそも関心があるぶん、ちょっとした心がけで普段からできるのではないだろうか。


双方向性が容易に構築できるインターネットの登場と興隆により、述べられている主張の異論反論を見つける機会が格段に増えた。
ブログやツイッターでのやりとりやソーシャルブックマークサービスが特にそうである。
これらは「思考の型」を見抜き分析したり、それの弱点を知るのに有用だ。

インターネットを存分に活用していきたい。また国民全体の思考力が高まりよりよい社会になっていくことも期待したい。

メモ

レトリックは嫌われることが多い。しかしいっそのこと嫌われているとおり、レトリックを議論に勝つための、相手を論破するための、ただそれだけの技術として作りあげたい。そのことによって、逆に、「レトリックの論理」に迫れるのではないか。p194

→筆者は、レトリックが相手を論破するための道具に過ぎないのではないかと絶望する一方で、人間に備わる「倫理」を信じているのだと思う。そして最終的には「倫理」のためにレトリックが使われると考えているのだろう。私もその考えに同意したい。