「空気」と「世間」

「空気」と「世間」
鴻上尚史 2009 講談社

内容(「BOOK」データベースより)

会社、学校、家族、ネット、電車内―どこでも「うんざり」してしまう人へ。「空気」を読まずに息苦しい日本を生き抜く方法。人気の脚本・演出家がこの10年間、ずっと考えてきたことの集大成。

感想

○「空気を読め」という言葉があるが、「空気」とはいったい何なのか? 「空気」と、それに密接に関係するという「世間」の正体を明らかにし、それに振り回されない方法を探ろう、という本だという。
日本の「世間」には長幼の序だったり、排他的で身内を大切にするルールや特徴があると引用し、その「世間」のうち、ルールが変わるかもしれないと人々が思うときに、「空気」というものがたち現れてくると論じている。ルールが変わるかも、と人が思う状態を世間が「流動化」していると名付く。
ここら辺はおもしろいなあと思ったが、なんか枝葉末節が多く(随筆みたいな文章だし)、一般論というか、当たり前の議論に終始している印象。

○人の学説を引用するのはいいし、きちんと出典を明示しているのでなおのこといいんだけど、先行研究からどう発展させているのか分かりにくい。

○「世間」や「空気」に縛られ翻弄される日本人を批判している。僕も同意見。ただ、さいさきはとても明るいと思う。グローバル化の進展による様々な価値観との交流や、個人メディアの発達によって、僕たちは価値観をぶつけ合い議論し練り上げる社会に移行しつつある。そう信じる。

○インターネットにおいて、ブログを炎上させてる人々を、「正論」を語る「世間原理主義者」だと批判している。しかし僕は、ただおもしろいからやってるだけで、「正義」だとか、「伝統的で暖かい日本」がどうたらとか、著者が指摘するような高邁な思想はないと思うだけどネ。

メモ

「「長幼の序」が決まらないと、日本人は円滑なコミュニケイションがそもそもできない」p99