論理的に考える方法 判断力がアップし本質への道筋が読める

論理的に考える方法 判断力がアップし本質への道筋が読める
小野寺博一 1998 日本実業出版社

内容(「MARC」データベースより)

日本人は主張がヘタ。それは主張の仕方が論理的でないからだ。「自分が論理的に考えていることを示す」ところに説明の力点を置いた、論理的に考え、行動するための本。

メモ

「理屈の蔑称は「屁理屈」であり、これは論理的でない人が論理的な人にたち打ちできないことを感情的に解消したいときにする「感情のこもった語でのアタック」で、この語「屁理屈」を使うのです。
 ですから、「屁理屈」は蔑称として使われるというだけの理由で、この意味の「屁理屈」を嫌うのはバカげたことです。(中略)論理的でありたい者は、この意味での屁理屈を愛すべきなのです。」p23

「信念が異なる者同士では、当然、行動で向かい合うことになります。そのとき、議論の必要がでてきます。そこで論理的に、理性で対立を解決してゆくべきものなのです。」p42

「「批判的に考える」とは、よりくわしく言えば、ほんとうにそうなのだろうかから始まって、ほんとうか否かをあなた自身で判断すること」p162

感想

○論理的思考力を高める本。
批判的思考力を高めるため、現実的な話題をもとに論理学を説く本。
そういう本が昨今増えているが、出版年月日を考えると、本書はそのはしりといえるような気がする。

○書いてあることはクリティカルシンキングの本によく書いてあることと同じ。
丁寧に論理展開し「論理的に考えているのだということを示す」ことや、曖昧な表現でぼかすのではなく主張を明言すること、根拠をしっかり書くことなどを説いている。

○論理的に考えたら行動するべきと主張している。もちろん行動した方がいいし、いやむしろ行動することの方がずっと難しく、かつ重要なことだとは思う。しかし、「論理的に考えること」と、「考えたことを行動に移すこと」は別問題であり、「論理的に考えること」に要点を絞った本書は、あまり行動うんぬんの話はしない方がいいと思う。するのなら本書の焦点が変わる。
行動することも大事だが、多くの人間が行動する以前に、まず論理的に考えられていない。最初のステップをまずできるようにすることも重要だろう。

○考える上では結論が先にきてはいけないと主張するが、そんなことはないと思う。直感で結論を出し、それに向かって理由を考え論理を整えてもいいだろう。直感が間違うこともあるが、正しいことも多い。結論が先にきてはいけないというのは言い過ぎ。

○あいまいな表現で主張をしてはいけないと指摘する。(気がしてならない)とか(〜と願わずにいられない)とか(〜と疑問を持たざるを得ない)とかのたぐいね。
明言せずぼかすことで責任を逃れようとする意識が働いているのだろう。
筆者の主張は大賛成。
一方、このような曖昧な表現が蔓延しているのは、日本語における文末表現の貧弱さを補おうとしているからではないかとも思った。僕も、このような曖昧な表現を使ってしまう。なぜかと考えたとき、上記のようなアイデアがでた。「だ」とか「である」、「用言の終止形」、「体言止め」といった文末しか日本語にはない。同じような文末が繰り返され、単調な文章になってしまうのを防ぎたくて、あいまいな表現を使ってしまう、という理由もあると考えた。