ニッポニアニッポン

ニッポニアニッポン
阿部 和重 2001 新潮社

内容(「BOOK」データベースより)

俺の人生に大逆転劇を起こす!ネットで武装し、暗い部屋を飛び出た引きこもり少年は、いかにしてニッポンに叛逆したのか?国家の象徴トキをめぐる革命計画「ニッポニア・ニッポン問題の最終解決」とは何か?研ぎ澄まされた知的企みと白熱する物語のスリルに充ちた画期的長篇作品。

感想

 ニッポニア・ニッポンという日本を背負うかのような学名をもつトキ。ニッポンに生息するものは絶滅寸前に追い込まれてもまだ、その名前にゆえに、人間の都合、国家の都合に翻弄される。
 ごくごく数羽にまで減った佐渡のトキも、追いかけまわされ捕まえられ、檻の中に閉じ込められ、自由を奪われる。さらには、中国から繁殖用のトキがもちこまれ、日本中が「日本の」トキを繁殖させようとし、その一挙手一投足をみつめる。

 そんな皮肉な運命を生きるトキの魅力、あるいはその運命にとりつかれた「孤独」で「寂寥」な(http://www.amazon.co.jp/review/R14BCJHY8FBQUV/ref=cm_cr_dp_title/377-2202875-2536718?ie=UTF8&ASIN=4104180025&nodeID=465392&store=books)少年が、トキ保護センターに侵入し、トキを殺すか逃がそうとするお話。

『トキ保存・再生プロジェクト』の関係者らは是が非でも、日本産トキを復活させねば気が済まぬらしい。彼らはあくまでも、日本産の血統に拘りたいわけだ……『国籍』の場合と同じように。つまり彼らは、トキという希少動物の保護増殖こそが課題であるかに振れ回りながら、実情は何のことはない、『にっぽん』という名と血と国の『保護』であり、『増殖』であり、『保存』であり、『再生』を最大の目的としているわけだ。


 主人公の、なんともいえない泥臭さ、いたいたしいまでの粘着的で幼い様子が印象的だった。