インテリジェンス 闇の戦争 イギリス情報部が見た「世界の謀略」100年

インテリジェンス 闇の戦争 イギリス情報部が見た「世界の謀略」100年
ゴードン・トーマス (著), 玉置 悟 (翻訳) 原著2009 講談社

内容、出版社ウェブサイトより

世界18ヵ国で翻訳された名著!
ジャーナリスト 池上彰氏推薦!

「スパイ活動の歴史をイギリス情報部を軸に描くドキュメント。『007』は実在したのか。あなたは現代史の裏を垣間見る」

事実はスパイ小説より奇なり!
●原爆の秘密をソ連に渡したスパイ
イラク戦争開戦前後の奇妙な人事
イギリス大使館に潜入したソ連のスパイ
●ベルリンのトンネル盗聴作戦
天安門事件で中国と取引したアメリ
アルカイダに援助を申し出た中国情報部
●日本の大企業の中枢に出入りできる内通者を探せ
●M16をクビになった元諜報員の証言「ダイアナ謀殺説は真実だ」
●病原体の研究者たちが次々と不審な死をとげた

感想

 イギリスのMI5やMI6、アメリカのCIAの活動を通し、西洋諸国側からみたインテリジェンスの闘いや政治工作、裏取引などを描く。
 長年にわたる取材や、告発本を元に書いているよう。
 インテリジェンスとは、政治や治安、経済や軍事上の目的などのために、人間や機械による情報収集や情報防衛、情報分析、情報工作(宣伝や偽情報を流す)をすること。当然冷戦後の今も、続いている。いまだったらインターネットを通した情報入手や、あるいは相手のプログラムを起動できなくする工作も活発なのだろう。
 西側のMI5、MI6、CIAとロシアのKGBの闘いは手を汗握る。イスラエルモサドも頻繁に登場するが、どの諜報機関もあくまで自国の利益のために動いており、西側諸国といえども一枚岩で協力し合っているわけではないようだ。ときに同盟国すらだます。
 スパイの獲得や運用、尋問、都合の悪い人物の暗殺、相手をだますための偽情報の流出、世論を誘導するためのマスコミを通しての宣伝工作などなど、本書で描かれる諜報機関の活動は想像以上だった。国ってここまでやるんだ、と感じた。他国がここまで、非道徳的だったり、超法規的ことをやってるなか、日本は大丈夫なのだろうか。
 昨今のウサマ・ビン・ラディンの殺害や、三菱重工業へのハッキングも、諜報機関の活動だろう。本書を読むと、その様子が多少は目に浮かぶようだ。
 CIAでさえ、作戦が漏れたり、2重スパイにだまされたりする。翻って我が国。とてもじゃないが、機密情報を入手したり守ったり、的確な分析ができそうにないなあ。
 アメリカが兵器のプログラムをブラックボックス化して輸出するのは、日本への技術流出はさることながら、意図しない他国への技術流出を懸念しているからなのだろう。

 ネットをあさってみると、(よく知られた事件ばかり書いてあり)インテリジェンスを学ぶ上でいい入門書になる)、みたいな感想が多かった。そうか、この手の話が好きな人にとっては、本書を読んで僕がびっくりした諜報戦争の内実も常識の範囲なのね。