「激安」のからくり

「激安」のからくり
金子 哲雄 2010 中央公論社

内容(「BOOK」データベースより)

経済をわかりやすい語り口で語る著者が、「激安」商品を俎上にのせ、安さのからくりをズバリ指摘。コストを徹底的に減らせたワケは。コラムも充実した、賢い消費者になるための必読書。

感想

ジーンズや激安ハンバーガー、スーツ、PCなどを例に、これらの商品がなぜ低価格で提供できるようになったかを整理する。また、ダイエーユニクロドンキホーテの経営者を取り上げ、彼らがこれまでの常識に反することで安売り実現し、新しい在り方を提示していったことを紹介する。

なぜ各種商品が安くなっているのか?
本書で示されるその解は、
問屋を通さなかったり、
在庫を持たないよう必要な分だけ発注したり、
発展途上国で生産したり、
抱き合わせ目的だったり、
材料のコストが低くなる時期を徹底的に調査したり、
パーツを共通化したり、
売店プライベートブランドを展開したり、
と、当たり前のことばかりで、特に新味はない。

まあ、衛星で穀物の豊作不作を監視して、豊作のところから、つまり需要に対し供給の多いところから安い金額で穀物仕入れる会社があるという話がおもしろかったかなあ。

経営者の話は興味深かった。それぞれ、常識に果敢にチャレンジして、慣習を打ち破り、新しい潮流を産みだした。
ダイエー中内功は、これまでのように生産者が決めた金額で商品を棚に並べるのではなく、「消費者が欲しいと思う金額」を考え、小売店が値段をつけることを広めた。
イトーヨーカドーの鈴木俊文は、POSデータを分析することで売れ筋商品に徹底的に絞り込み、安売りをなした。
ユニクロ柳井正は、仕入れて売るではなく、「作って売る」ことで、商品のデザインや品質、価格、在庫管理をコントロールした。
ドンキホーテ安田隆夫は、商品をきれいに並べるのではなく、雑に並べることで、管理の手間を省き、また消費者に商品を探す楽しみを提供した。

常識を挑み、そして新しい常識を定着させて人々のストーリーはおもしろい。ドンキホーテは別として、いずれもアップルのように、後の世で当たり前になるものを産みだした。

本書は最後の方で、(価格破壊が進むと日本人の仕事が無くなるので、注意せよ)と主張している。小学生の感想文みたいな幼稚な主張で残念。