江戸の決断 武士たちは、どう諸藩を立て直したのか

江戸の決断 武士たちは、どう諸藩を立て直したのか
河合 敦 2006 講談社

内容(「BOOK」データベースより)

成功例と失敗例、驚くべき江戸時代の「幕政・藩政改革」。

感想

○「江戸時代の我が国は、絶大な経済力と軍事力をもった幕府(徳川家)が、二百数十藩(大名家)の上に君臨し、これを統制する体制をとってきた。そういった意味では、藩は一つの小国家といえた。」(はじめにより)
幕府も藩も経済基盤が傾いてくると、当然それを維持するため改革を断行せざるを得ない。本書は幕府をはじめ、諸藩が経済危機に対しどのような改革を行い、どのような結果を得たか、紹介している。
おもしろいな、と思ったのが、成功した改革ばかりではなく、失敗したり頓挫した改革を取り上げていること。半分近くは失敗した改革である。多くは保守的な重鎮の強い反発にあい、改革を頓挫させてしまっている。そういう例をみていると、成功した改革ばかりが日の目をみているけれど、その裏でいかに多くの人々、諸藩が改革に挑戦し、そしてその多くが失敗していったか、ということを感じさせられる。
こういう視点はよい。

○幕府や諸藩はあの手この手で財政を再建させようとする。
新田開発を奨励したり、河川を工事したり、仕事のない人に職業訓練したり、質素倹約をすすめたり、流通に税をかけたり、不作対策に米を蓄えたり、必需品を藩の専売にしたり、偽金を作ったり、密貿易をしたり、借金を踏み倒したり。
ただ、成功した藩は、身分は低くくとも有能な人材を登用したり、教育や各種技術の導入や向上につとめたところが多いようだ。

現在にもつながること。

○当時の図版が豊富で親しみやすい。改革を図で示しているものも多く、理解しやすい。

○副題が「武士たちは、どう諸藩を立て直したのか」となっている。しかし失敗し理想倒れに終わった改革も多く取り上げていることから、正確を期すならこういう副題になるだろう。すなわち、

「武士たちは、どう諸藩を立て直そうとしたか」