農業がわかると、社会のしくみが見えてくる 高校生からの食と農の経済学入門

農業がわかると、社会のしくみが見えてくる 高校生からの食と農の経済学入門
生源寺眞一 2010 家の光協会

内容、帯より

なるほど、そうだったのか!世界の食料、日本の農業、毎日の食生活。3つの複雑な関係をていねいに読み解き、食と農への理解を深めるユニークな「授業」。

感想

本書の狙いは、「世界の食糧、日本の農業、そして毎日の食生活のつながりを、授業形式で分かりやすく伝えること」。
冷静に事実を積み重ね、現在の農業や食生活の状況がどうなっているのかを明らかにしている。
タイトルであるのと同時に、逆もまた成り立つ。
すなわち、『社会がわかると、農業のしくみが見えてくる』。
当たり前のことかも知れないけれど、社会のシステムに従って、農業のシステムもできるのだから。
だから、農業から社会を理解することができるのと同時に、社会から農業を理解することもできる。

メモ

(製造業やサービス業と違って農業は、先進国から途上国への技術移転が難しい。先進国で開発された技術(新品種など)を途上国に持ち込もうとしても、自然条件が違うのでうまくいかないことが多い。)p65

「農薬や化学肥料の使用をおさえた環境保全型農業については、規模の大きな農家ほど取り組みの割合が高いことも、統計によって確認されている。環境保全型農業にはたしかな技術が必要だし、手間もかかる。片手間の農業では難しいわけだ。」p150

(農業には、市場経済ではその価値を考慮することのできない副産物がある。景観の形成や、地下水の涵養、洪水防止、酸素の供給、命と向き合う場の提供、など。これらには、通常の農産物の取引の場面では対価が支払われることはない。)p164