コミュニティを問いなおす つながり・都市・日本社会の未来

コミュニティを問いなおす つながり・都市・日本社会の未来
広井良典 2009 筑摩書房

内容、カヴァー折口より

戦後の日本社会で人々は、会社や家族という「共同体」を築き、生活の基盤としてきた。だが、そうした「関係性」のあり方を可能にした経済成長の時代が終わるとともに、個人の社会的孤立は深刻化している。「個人」がしっかりと独立しつつ、いかにして新たなコミュニティを創造するか―この問いの探究こそが、わが国の未来そして地球社会の今後を展望するうえでの中心的課題となろう。本書は、都市、グローバル化社会保障地域再生、ケア、科学、公共政策などの多様な観点から、新たな「つながり」の形を掘り下げる大胆な試みである。

感想

 これまでの日本のコミュニティについて整理し、今後日本で望ましいコミュニティとは何かについて、様々な観点から考察している。
 一発目で、「これからの日本社会や、そこでの様々な課題を考えていくにあたり、おそらくその中心に位置していると思われるのが「コミュニティ」というテーマである。」とぶちかましているが、強く強く同意。人間というのは、コミュニティからの承認を幸福感の源泉とし、そのシステムに強く縛られている。それをどう改善していくかで、個々も時代にあった行動をし、幸福感も増すと思う。
 筆者の主張の結論をいうと、日本社会は
「α物事の対応や解決が、主として「個々の場面での関係や調整」によってなされるような社会」だ。しかし、「『社会』の規模がある程度以上の大きさであり、また“水入らず”とはいえない関係が多くなり、かつメンバーの出入りが多い」p247社会になりつつあるため、これでは人々の孤立や拘束感・不安を強め生きづらさの源になっている。だからもう少し、「b物事の対応や解決が、主として「普遍的なルールないし原理・原則」によってなされるような社会」になるべきp243。バランス良く。
と、主張している。
 強く同意する。


もっとも、全体的に、
(現状のコミュニティがこうなっている。これからこうなるだろう)と、(これからこうなるべきだ)が少しごっちゃになってる感がある。(これからこうなるべきだ)と主張するには、前と比べて、価値観を明らかにする手続きが必要だ。そこが甘い。

メモ

(「子どもの時期」と「高齢期」は地域への土着性が高い。今後の高齢化で、"地域との関わりの強い人々"が一貫して増加する)p19


「日本における人と人との関係のあり方の特徴として、「"身内"あるいは同じ集団に属する者の間では、過剰なほど気遣いや同調性が強く支配する反面、集団の『外』にいる人間に対しては、無視か、潜在的な敵対関係が一般的となる」」p34


(コミュニティの中心として重要な役割を担ってきた場所は、外部との接点ではないか。
例えば、宗教施設、学校、商店街、自然、福祉・医療関連施設。
コミュニティはその中心において外部へと反転する。)p91


(日本は、所得の格差に比べ資産の格差が相当程度大きい。議論されるべき。)p163


(日本は、その他先進国と比べ、子ども・家族関係、若者関係、雇用政策、失業保障、住宅関連、生涯関連、教育など、「人生前半の社会保障」がとても低い)p174


(相続税、土地課税、環境税を強化し、人生前半の社会保障として活用し、資産の再配分を図るべき)p201


(近代科学は常識をひっくり返してきたが、現代科学が明らかにしつつあることは、結論をみる限りむしろきわめて常識的。例、病は気から)p218