日本の原像

日本の原像
平川南 2008 小学館

内容

内容(「BOOK」データベースより)
遺跡や文字から読み解く古代社会の実像。

雑感

 文字史料をもとに、古代の日本人の生活にせまっている。図版が豊富で、どのような史料が発見され、そしてそれがどう解釈できるのか、書かれている。研究者(著者)の考察の道筋がたどれておもしろい。土木工事などのため、偶然発見される土器や、木簡、紙。そこに残されたちょっとした文字や文章から、少しずつ古代の人びとの生活が明らかになる。昔であればあるほど、歴史というのはこのような地道な発見とその解釈に支えられているのだろう。古代の人びとの生活やものの考え方というのは非常に興味深いが、それは断片を組み合わせていったものであるし、そうならざるを得ないというのはよく理解すべきだと思った。


 本書では多数のトピックスが扱われているが、古代(中世より前)において稲に多数の品種があり、それを認識し使い分けながら栽培していたという指摘には驚いた。

メモ

(全国各地の古代遺跡から稲の品種を書いた木簡(種子札)が発見される。その品種名は、古代末期の和歌にもみられ、また近世の農書などに記されている稲の品種名と十数例も合致する。「このことは、日本列島における稲作農耕は古代において大部分の骨格が形成され、中・近世に継承・発展したことを物語っているであろう。」)p92