アジア新聞屋台村

アジア新聞屋台村
高野秀行 2006 草思社

内容、アマゾンより

タカノ青年、多国籍新聞社の編集顧問になる!
ワセダの三畳間に沈没していたタカノ青年は、突然、東京にある多国籍新聞社の編集顧問にスカウトされる。とことんアジア的な寄り合い所帯はどこまでもパワフルで個性的。何とも人間くさい青春物語。

感想

 「本書は、著者がかつて関わった複数のアジア系ミニコミ出版社での体験をもとに書いた、初めての小説である」、そうだ。
 登場人物は強烈な個性をもつ人たちばかり。はたして、そういう人たちを創造したのか、あるいは登場人物のモデルになったであろう在日外国人は変わった人たちばかりなのか、あるいは著者は周りの人々の個性(その人らしさ)をみつけるのがうまいのか、、、。
 そこでの人間模様を、コミカルな筆致で描く。

なるほどと思った他者の文章

(「積ん読パラダイス」より)
http://www.asahi-net.or.jp/~wf9r-tngc/ajiasinbun.html

同じインドネシアの新聞を作っていても、イスラム系の責任者と中国系のスタッフとの間には溝があって、なかなか埋められないといった話を通して語られるアジア的な、と一口に言っても国によって、民族によってそれぞれあって多彩な感性が、エイジアン新聞社でタカノ青年が経験する様々なエピソードを通して描かれていく。
 誰かのために仕事をするんじゃなく、自分のために仕事をする。だから苦境も厭わない。誰かに居場所を与えてもらうんじゃなく、自分で居場所を切り開く。そんなエイジアン的生き方という奴を、仕事を通して知ってタカノ青年は「エイジアン新聞」を”卒業”していく。
 学生時代に探検部に所属し世界を歩き回っては、数々のノンフィクションを著して来た作者ならではの見地とか、日本にあるアジア系のミニコミ誌で仕事をして得た作者のの経験が盛り込まれた小説で、どこまで本当かは分からないけどすべてが本当にあっても不思議じゃないくらい、どのエピソードもリアルだしどの登場人物も生き生きとしている。