戦争の常識

戦争の常識
鍛冶俊樹 H17 文藝春秋

内容、カヴァー折口より

新聞やテレビなどで戦争のニュースに接しても、自分では分かったつもりの言葉の中には、意外と理解のあやふやなものが少なくない。本書は兵器の解説のみならず、軍隊の仕組みや兵制、作戦など、戦争に関わるすべての分野の基本用語を、アフガニスタン戦争やイラク戦争などの具体的な現代史も踏まえて分かりやすく解説する。どこから読んでも役に立ち、ニュースを見る目が違ってくる。

感想

 安全保障から現在の戦争の実態、兵器の種類について。基本的なことを中心に。基礎基本といえばそうなのだが、もう少し突っ込んだ中身がほしい。特に現代の安全保障の特徴について知りたい。
 「平和」を叫ぶのももちろん大事だが、この程度の基礎知識を身につけてから話をしてほしいものだ。病気を克服するには病気についてよく知らなければならない。戦争を克服するには戦争(軍事)についてよく知らなければならない。

メモ

「正規戦は大変に目立つが実は氷山の一角に過ぎない。その海面の下には何十倍もの情報戦争が隠れている。それはしかも正規戦の始まる遙か以前から始まっており、正規戦が終わった後も間断なく続く。」p49


(国際法では正規軍は、「遠方から識別できる固有の標識を有すること」、となっている。確かに昔の正規軍は華々しい制服を身につけ威風堂々と戦っていた。しかし現代では、迷彩服に身を包み、顔や手まで塗料で迷彩している。国際法のこの部分はほとんど死文化したと言っていい。正規戦が非正規戦化している。)p52


「 日本では徴兵制というと非民主的に捉えられがちだが、フランスではむしろ逆である。王侯貴族や傭兵の独占物だった軍隊を広く一般市民に開放したのが徴兵制だと考えられている。
 従って軍人を職業化するということは、軍隊を再び一部のエリートの独占物にしかねない危険な試みだと批判されることになる。」p92


(アメリカの開発したF15イーグルは世界最強の戦闘機と呼ばれ、歴史を変えたとも言われる。1982年のレバノン紛争ではイスラエルのF15・F16が、シリアのミグ23・ミグ21と三日間にわたり大規模な空中戦を行った。80対0で、F15・F16が完勝。これにびっくらこいたソ連が、技術格差を埋めるためにペレストロイカに乗り出して失敗。ソ連崩壊につながった。)p160


(有事法制でも、自衛隊と普通の軍隊は違う。
そもそも世界各国の軍隊は祖国統一時の戦争で誕生する。軍隊が登場してから国家が確立する。従って国家が確立した時点において軍隊は、戦争遂行に必要な権限を全て手中に収めている。
一方、自衛隊は国家の後に誕生。後発の行政組織なので、権限を先輩格の各庁からわけてもらわないといけない。従って、有事の自由裁量の範囲が他国と比べて極めて狭い。)p208