騎兵と歩兵の中世史

騎兵と歩兵の中世史
近藤好和 2005 吉川弘文館

内容、背表紙より

武具の下剋上―。古代より続いた弓射騎兵から、南北朝期の打物(刀剣類)騎兵の登場を経て、戦国期の歩兵主体のいくさへ。合戦の大転換はなぜ起こったか。『平家物語』『太平記』や絵画史料から、中世合戦の真実に迫る。

感想

 前近代の兵士は、時代や地域を問わず四つの形態に分類できるという。
一つは馬に乗って弓などの飛び道具を繰る兵士、
一つは馬に乗って剣などの打撃兵器を繰る兵士、
一つは徒歩で弓などの飛び道具を繰る兵士、
一つは徒歩で剣などの打撃兵器を繰る兵士。
 本書は、日本の古代から中世において、この兵士の形態がどのように変化していったのかを、書誌史料や絵画史料、武器防具の分析によって明らかにしようとしている。
 結論としては戦闘の主体は、弓射騎兵から打物騎兵、そして歩兵へと変遷していったという。


メモ

( 世界史的に見て、前近代の戦士には四つの形態がある。
①馬に騎乗し、弓矢・火器(鉄砲など)・投槍などの飛び道具を攻撃兵器として使う。
②馬に騎乗し、刀剣類・棒などで打撃・斬撃・刺突などを目的とする衝撃具を攻撃兵器として使う。
③徒歩で、弓矢・火器(鉄砲など)・投槍などの飛び道具を攻撃兵器として使う。
④徒歩で、刀剣類・棒などで打撃・斬撃・刺突などを目的とする衝撃具を攻撃兵器として使う。)p1


律令制下では、身分にしろ行事にしろ警護の実務が重くなるほどに弓箭の規定が加わる。」p50


( なぜ中世日本において、先頭の主体は騎兵から歩兵になったのか? それは戦闘目的が変化し、それに合わせて戦闘戦略、戦闘戦術も変化したからではないか。
 戦闘の目的をあえて大別すれば、
①敵の掃討や殲滅、
②領地の争奪
に分けられる。
戦闘目的が①ならば、弓射騎兵による弓射が有効。一方、戦闘目的が②ならば、弓射よりも歩射が有効。なぜなら拠点の支配や防衛には常設の城郭が必要で、それに対する攻防は歩射主体にならざるを得ないから。
 戦闘目的の変化により、日本中世は騎兵から歩兵主体になったのではないか。)p204